Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMFの世界経済見通しと日本経済

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年10月15日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 10月13日にIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された(下表)。6月からの変化を中心に特徴を整理したい。


 ①2020年の世界経済は-4.4%と、縮小見通しに変わりはないが、6月対比では米欧や中国を中心に0.8%上方修正。それら地域で7~9月にかけての回復ペースが想定以上であったことが背景。米欧では自動車中心に個人消費の戻りが強めであり、中国では積極的なインフラ投資などが上振れに作用した。


 ②2021年の世界経済については+5.2%と、リバウンドを想定しつつも、0.2%下振れ。7~9月の米欧はやや出来過ぎで、感染再拡大の影響などから、先行きの回復ペースは緩やかにとどまるとの見方。また、不確実性は大きく、リスクは下振れ方向を警戒。


 ③2020年の新興国経済は、インドが大幅に下振れ2桁減が見込まれているほか、ラ米も2桁近くの減少が予想されるなど、幾つかの国でかなり弱い姿。衛生・医療体制が十分でない中で感染者・死者数が増加を続けていることや、財政余力に乏しく経済下支えが難しいことが主因。


 以上のように、IMFの世界経済見通しは慎重さを残し、国によるバラツキも大きい。民間エコノミストには、全体として落ち込んだあと、セクターや国によって上下にバラツキが大きいとの観点から、「k字型回復」と呼ぶ者もいる。


 日本のパフォーマンスは悪くはないが、米欧との比較では、ロックダウンの回避から4~6月の落ち込みが小さかった一方、7~9月の戻りはかなり鈍かったようだ。これは、①日本人は欧米人に比べ感染への警戒感がかなり強い、②重症化リスクから活動を控える高齢者の比率が高い、ことなどが背景だろう。


 感染防止と経済復興のバランスは難しい課題だ。日本の景気回復ペースは鈍いが、感染拡大を抑制しており、持続可能なペースとも言える。一方、感染を警戒し過ぎると、経済活動の過度な抑制に繋がり得る。答えはないが、国民一人ひとりが、感染防止に細心の注意を払いつつも、“Go to”などを活用しながら消費を楽しむ意識を少しずつ強めてもよい局面に差しかかっているのではないか。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。