Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

最近の株価上昇をどう理解するか

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2020年11月30日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 新型コロナ感染症が急速に再拡大し、当面、景気には減速感が出そうだ。一方、主要国の株価は、ひと頃の足踏み状態を脱し、再び上昇している(下図)。日本株も、日経225、TOPIXともに、コロナショック直前のピークを上回った(日経225は1991年4月以来の高値)。


 こうした実体経済と株価の乖離については、以前ビジネスレターで指摘したように、基本的には(1)株価は2~3年先以降の経済や企業価値を反映しており、コロナの影響もそれまでに収まる(2)コロナを契機にデジタル関連企業の価値拡大や経済の生産性向上が期待できる、といったことで説明可能。また、(3)コロナの影響が続くのは主にサービス関連の中小企業であり、上場企業ではデジタル関連のほか自動車関連などで業績回復が途切れていないことも要因。


 加えて、このところの株価上昇には、次のような要因も影響


 第一に、米国大統領選挙に関する不確実性が低下したこと。大きな混乱なく政権移譲が進む方向性が早期に明らかになったことや、上院で共和党が優勢となりバイデンの法人・富裕層への増税が難しくなったことなどが、好感されているようだ。


 第二に、有効性が高いとされるワクチンの開発が複数明らかとなったこと。感染再拡大で当面の景気が足踏みしたとしても、来年にはワクチンが浸透するため、先行き回復の確からしさが増しているとの見方だ。一部の海外エコノミストは、来年後半の世界経済が上振れる可能性を指摘。


 また、今回の上昇局面では、やや出遅れていた日本株の上昇テンポが速いのも特徴。ただし、今のところ、日本企業の成長性への期待というより、米国株がかなりの高値となる中で、割安感から日本株が買われていると見ておいた方がよさそうだ。


 多少気になるのは、いずれの要因にせよ、市場が好材料のみに反応している点。例えば、ワクチンの有効性や副作用に関する不確実性には目を瞑っている。景気は回復する一方、積極的な財政金融政策は続くという、非対称性も前提としている。


 そうは言っても、市場のやや楽観的な見方を否定するだけの確かなエビデンスもない株高は、感染拡大の中でも、人々のマインドを支える好材料であることは間違いない。株価の先行きについては、警戒感を持ちつつも、堅調な展開を期待することとしよう。

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