Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

緊急事態宣言と経済への影響

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年1月8日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。一都三県を対象に緊急事態宣言が再発令されましたので、本年初回の点描のテーマとします。


 新型コロナウイルス感染症の拡大が続いている(図表1)。基本的な背景は、寒さや乾燥といった季節要因に加え、ヒトの動きがなかなか沈静化しないことにある。


 小売や飲食店等におけるヒトの動きをみると(図表2)、東京や千葉では、11月半ば頃から頭打ちとなったものの、12月に入ると再びジワジワ増加、下旬にその動きが加速した。政府は11/26日から「勝負の三週間」と警戒ムードを醸成し、東京などでは飲食店の営業時間短縮にも踏み切ったが、コロナへの慣れや年の瀬要因からか、人々の自発的な活動抑制には至らなかった。


 この間、北海道などでは、早め・厳しめの時短要請などから、11月から12月にかけて明確にヒトの動きが減少、その後の感染抑制につながった。


 こうしたもとでの緊急事態宣言。当面、経済活動は弱まるが、春と比べると、落ち込みは小さいとみられる。主な背景は、①宣言は限られた地域、②時短要請等は一部の業種、③短期間。


 確かに時短対象となる飲食店などにとっては厳しいが、経済全体に占めるウエイトは数%程度であり、世界的な製造業回復や株価上昇、積極的な財政金融政策などによって、景気回復のモメンタムは損なわれないと期待。1~3月のGDP成長率はいったんマイナスに転じる可能性があるが、昨年4~6月(前期比年率-29%)に比べると、ごく小幅にとどまるだろう。


 むしろ心配なのは、この程度の限られた措置で本当に感染抑制に繋がるかどうか。年末にかけてのヒトの動きの増加がラグをもって影響し、目先、感染拡大が続きそうだ。季節要因も、暫く感染拡大の方に働きやすい。感染拡大が続けば、対象範囲を拡大しつつ緊急事態宣言が延長される可能性があり、却って景気への影響が大きくなる。


 政府の適切な舵取りを期待するとともに、企業・個人としては、当面、感染リスクの低減に最大限の努力を払い、早期の感染抑制、そして持続的な経済活動の回復に繋げていきたい。

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