Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

世界経済は感染拡大の割には底堅い動き

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年2月10日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨秋以降、新型コロナ感染症が急拡大するもとで、世界経済は減速しているが、感染拡大の割には底堅い動きとなっている。


 企業の業況感を示すグロ-バルPMIをみると(図表1)、サ-ビス業は昨秋以降やや弱めとなっているが改善・悪化の分岐点である50を維持(1月51.6)しているほか、製造業では50をはっきり上回る水準(1月53.5)で堅調に推移。


 その背景は、①活動制限は昨春と異なり限定的、②積極的な財政・金融政策、③株高、④自動車・デジタル関連を中心とした製造業の回復、などが挙げられる。世界的に、経済政策や株高により個人所得が下支えされるもとで、サ-ビス消費が伸び悩む分、モノ消費は堅調のようだ。


 米欧では、春以降、ワクチン接種が普及するもとで感染が収束に向かい、経済活動の回復が明確になるとの見方が多い。1月半ばに公表されたIMFの世界経済見通しをみると(図表2)、2020年の成長率が-3.5%と、米欧や中国の戻りの強さを反映し、半年前(昨年6月)に比べ1.4%上方修正。2021年は、+5.5%と高めの成長が予想されており、半年前と比べ成長率は0.1%の上振れ。水準は、発射台となる2020年が1.4%上振れているため、1.5%切り上がっている計算。米国の追加財政支出などが押し上げに寄与するとの見方だ。


 ワクチンに関しては、世界的に接種が遅れ気味との情報があり、副反応や有効性を含め、なお不確実性が小さくない。ただし、積極的な経済政策や株高など世界経済を取り巻く環境は差当り良好さを維持しそうであり、季節要因もあって感染が収束に向かえば、強気にみえる経済見通しもあながち誤りとも言えない。日本にも、貿易や金融資本市場を通じてプラスの効果が及ぶだけに、そうした世界経済見通しの実現を期待したい。

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