Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業活動は全体として改善傾向を維持──3月日銀短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年4月1日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

 本日(4/1日)、日銀短観3月調査結果が公表された。企業活動について、緊急事態宣言の影響をみたり21年度を展望したりする上で、重要なヒントを与えてくれるものだ。

 まず、企業マインドをみると(図表1)、全規模・全産業の業況判断DIは、昨年6月の-31をボトムに3月は-8まで改善。緊急事態宣言の影響が懸念されたが、世界的な貿易回復を反映した製造業に牽引される形で、12月と比べて7ポイント改善。大企業・製造業の業況は+5と、コロナ直前の19年12月(0)を上回った。ただし、感染拡大の影響を強く受ける飲食・宿泊や対個人サービスの業況はマイナス幅を拡大しており、業種間のバラツキも目立つ。

 事業計画は(図表2)、売上・収益とも20年度が製造業中心に上方修正され、21年度は非製造業を含め増収・増益に転じる見通し。21年度の改善幅は20年度の落ち込みに比べると控えめで、慎重さも窺われるが、企業行動が前向きに転じる兆しと期待される。実際、設備投資も、21年度計画はソフトウエア投資中心に増加に転じた。20年度分の後ズレの面もあるが、3月時点の当初計画はマイナスであることが多いだけに、堅調な計画といえる。

 最後に、雇用人員判断をみると(図表3)、中小企業中心に「不足」超幅が拡大した。今のところ、コロナ前に比べると不足超幅は小さめではあるが、経済活動がさらに回復すれば、人員確保が再び大きな課題となってくることを示唆。

 以上のように、3月短観は、バラツキを伴いつつも、企業活動が全体として改善傾向を維持していることを示す結果。20年度の企業経営は守りが主要な課題であった。21年度は、感染再拡大になお注意は必要だが、ワクチン効果もあって世界経済の回復が次第に明確となる中で、コロナ禍を契機とした変化を睨みつつ、いかに前向きなビジネスを展開していくかがより重要な課題となりそうだ。

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