Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し──成長の上振れと中長期の課題

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年4月7日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨日、IMF(国際通貨基金)の4月世界経済見通しが公表された。ポイントは以下のとおり。


 ①世界経済は、20年に-3.3%と落ち込んだあと、21年が+6.0%としっかり回復し、22年も+4.4%と高めの成長見通し(下表)。1月の見通しと比較すると、21年を中心に上方修正。ちなみに、景気最悪期にあった昨年6月時点の見通しと比べると、20年は-4.9%から-3.3%へと大幅に上振れ、21年も+5.4%から+6.0%へと明確な上方修正。


 ②上振れの主な背景として、米国を中心とした財政政策追加とワクチン効果を指摘。20年の成長実績にみられるように、感染再拡大の経済下押しは限定的にとどまってきた。このため、当面の不確実性として、従来は下振れリスクを強調していたが、今回は上下バランスとの見解。


 ③課題としては、当面の医療体制やワクチン接種に関するもののほか、長期的な成長力、国による経済格差の拡大、米国金利上昇に伴う新興国への影響、非効率な財政支出の固定化など、コロナ収束後を意識した多くの課題を挙げている。


 以上のように、今回のIMFの世界経済見通しの特徴は、景気の足取りが確かになりつつあるもとで、大規模な財政金融政策の円滑な修正を含め、コロナによる後遺症を如何に軽減していくかといった長い目でみた課題が意識され始めていることである。


 長期的な成長力維持という観点では、グリーン化やデジタル化への取り組みのほか、コロナ禍を契機に変化が加速することを踏まえた、雇用者の再訓練などによる成長分野への円滑な労働移動の必要性も指摘している。


 日本では、昨年12月の経済対策で、業態転換などに取り組む中堅・中小企業を支援する「事業再構築補助金」制度の創設が打ち出され、4月15日から申請が開始される。先週の点描でも指摘した通り、そうした制度の活用も含め、今年度はポストコロナも展望した前向きなビジネス展開がより重要になってくる。

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