Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

ワクチン接種と感染状況──海外の現状

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年4月14日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 国内では、65歳以上の高齢者を対象として新型コロナワクチンの接種が開始。政府は、6月までに高齢者接種の必要量が確保できる見通しを示している。ワクチン効果をみる上で、接種が進んでいる海外の感染状況を確認してみよう。


 米欧等については(図1)、フランスやドイツで3月以降感染が再び拡大する一方、米国、英国、イスラエルでは感染が明確に減少。1回以上ワクチン接種した人口の比率は(4月12日時点、表)、フランスやドイツは10%台にとどまる一方、イスラエルが62%、英国が47%、米国が36%とかなり進捗。一方、アジアでは(図2)、感染規模は米欧に比べ総じて小さいが(図の目盛は米欧等の10分の1)、インドやフィリピン、日本などで経済活動の回復とともに増加傾向。ワクチン接種率は、いずれも一桁台にとどまる。


 海外のワクチン接種と感染状況をみると、変異株多様化の影響を含め不確実性はあるが、どうやらワクチン接種が進むと英国型変異株を含め感染が減少する傾向はありそうだ。ただし、集団免疫ができるには、少なくとも70%の接種が必要とされる。実際、チリやハンガリーといった3~4割までワクチン接種が進んでいる国でも感染が再び拡大する例もあり、ワクチン接種に伴う気の緩みなどが要因とされる(これらで主流の中国製ワクチンの問題点も指摘されている)。


 日本の場合、高齢者接種の効果について、多面的にみる必要がある。重症化リスクの大きい高齢者の感染が抑制されると、医療体制逼迫の緩和効果が期待される。一方、高齢者は国民の3割程度にとどまり、国全体の感染抑制には不十分。ワクチン接種が進む中で感染が拡大する海外の例からも示唆されるとおり、集団免疫ができるまでは、経済活動と感染防止のバランスになお注意が怠れない

 (出所)「Our World In Data」をもとに(株)ちばぎん総合研究所が作成

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