Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

景気の改善シナリオに変化なし─日銀展望レポート

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年4月27日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は、四半期毎に経済・物価見通しを示す展望レポートを公表した(4月27日、計数は下表)。今回のレポートは、黒田総裁任期後となる23年度の見通しを初めて示したものだ。


 特徴の一つは、景気の改善シナリオに変化がないこと。経済成長率は、世界経済の堅調さなどを反映し、20年度見込みが-4.9%と前回1月(-5.6%)から上振れし、先行きも21年度+4.0%、22年度+2.4%と前回(+3.9%、+1.8%)に比べ幾分上振れ。初めて示された23年度見通しは、+1.3%とはっきりしたプラス成長を維持。


 もう一つの特徴は、消費者物価の見通しが、23年度でも+1%にとどまり、日銀の目標である+2%をはっきり下回ること。前回との比較では、21年度が携帯電話料金の引き下げから下振れ。


 先行きの経済は不確実性が高いとしたうえで、当面は感染症の影響から下振れリスクが大きいが、見通し期間の中盤以降はリスクが概ね上下にバランスしていると評価し、前回までの下振れ中心からやや前向きに修正。感染再拡大の世界経済への影響が限定的にとどまっていることや、22年度以降は日本を含めワクチン接種の進捗が見込まれることが背景。物価は、これまで同様、下振れリスクが大きいとした


 金融政策は、これまでの大規模緩和を維持先行きも、物価上昇の鈍さを踏まえると、数年間は緩和的な金融環境が維持されるとみてよい。


 過去1年間の経験を踏まえると、コロナ感染が拡大すると大規模の財政支出が発動され、金融緩和と相俟って倒産・失業の増加や経済全体の底割れを回避してきた。ただし、「K字型経済」と言われるように業種・企業間でバラツキが拡大しており、ポストコロナを睨んでもある程度のバラツキが残る可能性が高まっている。


 政府の政策も、経済全体を下支えしつつも、デジタル化・グリーン化といった成長分野への支出増加や「事業再構築補助金」の開始などによる、経済構造転換のサポートへと重点をシフトしつつある。企業としても、そうした点を念頭に置きながら、今後の戦略を考えていく必要がある。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。