Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

1~3月GDP:もたつきが目立ち始めた日本経済

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年5月18日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(5/18日)公表された21年1~3月の実質GDPは、ほぼ民間予想どおり、前期比-1.3%・年率-5.1%と3期振りのマイナス1月に発出された2回目の緊急事態宣言が対面サービス中心に下押しに作用した姿


 ただし、1回目の緊急事態宣言が発出された昨年4~6月の成長率(前期比-8.1%)に比べるとマイナス幅は格段に小さい。輸出が3期連続で増加するなど世界的な製造業回復が下支えに作用したほか、緊急事態宣言の民間消費への影響も人々の「コロナ慣れ」等から大きなものとはならなかった


 とは言え、世界的には、日本経済のもたつきが目立ち始めている。海外主要国についてみると(図表1)、感染が持続的に抑制されている中国のほか、ワクチン効果から1月前半をピークに感染者数が減少した米国においても、プラス成長を実現。日本は、前期比、前年比とも、感染抑制に手間取った大陸欧州と似た動きとなった。


 その大陸欧州でも、英国・米国ほどではないが、このところワクチン接種が進みつつあり(図表2)、新規感染者数も4月後半から減少に向かっている。一方、日本ではワクチン接種の遅れが際立っており、感染収束には時間がかかるとみられる。


 このため、大陸欧州を含め、海外主要国では4~6月以降、景気回復が明確になると予想される一方、日本では景気のもたつき感が残りそうだ。「K字型経済」と呼ばれる業種や企業によるバラツキ拡大の状態もやや長引く可能性が高い。こうしたことが米欧に比べた日本の株価の鈍さに影響していると考えられる(図表3)。


 ワクチン接種については、人々の命を守るだけでなく、今や最大の景気対策になり得るという観点も含め、早急な普及を期待したい

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