Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

ゼロカーボン:「環境立県」を目指そう

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年6月2日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週5月26日、2050年までの脱炭素(ゼロカーボン)社会実現を明記した「改正地球温暖化対策推進法」が成立。欧州が主導する形で始まったグリーン化の動きは、米国バイデン政権による後押しもあって世界的に加速。日本でも、菅政権下でグリーン化の方向が明確になり、政府は「経済成長の制約ではなく機会」として2兆円の「グリーンイノベーション基金」も設立


 千葉県の地公体の動きをみると、県が本年2月に「ゼロカーボンシティ」(環境省が呼びかけている取り組み)を宣言。市町村では20年6月の山武市を皮切りに21年5月28日時点で11の先が宣言し(下表)、県を含めた55地公体のうち22%が宣言。千葉県の宣言は47都道府県中29番目と真ん中よりやや後れており、地公体の宣言割合は全国の22%と同程度


 千葉県の企業の意識を帝国データバンク調査でみると、「50年の目標達成が可能」とする先は千葉県で19.6%と、全国の15.8%を幾分上回る。ただ千葉県の場合、CO2排出のうち産業・エネルギー部門が5割を超え全国を1割程度上回るため、湾岸工業地帯の排出抑制が脱炭素に向けた課題の一つ(「ちば経済トレンド21年4月号」)。


 千葉の取り組みとして重要な点は、第1に、50年の脱炭素実現は、技術的な面を含め様々な課題があるが、抗えない流れであり、オール千葉としてコストではなくチャンスと前向きに捉えていく必要があること。グリーン化はイノベーションを喚起するし、その地域がグリーンであることを評価するヒトや企業を呼び込む流れにも繋がり得る。


 第2に、エネルギー関連では、太陽光や風力など千葉の自然の利を活かせるものに加え、素材産業の製造過程で生じる水素も重要なクリーンエネルギーになること。湾岸地域をグリーン地域に転換する発想もあり得るということだ。


 第3に、中小企業にとっても重要な課題やチャンスとなり得ること。グリーン化は現在大企業中心の動きだが、中小企業も、いずれ規制強化の対象になると考えられるほか、取引先からグリーン化への取組みが求められる可能性が高い。世界的には、例えばアップル社が、30年までのサプライチェーンのゼロカーボン達成に向けたロードマップを示している。他方、中小企業自身がゼロカーボンに早期に取組めば、顧客獲得にも繋がり得る。


 オール千葉として、他県に後れない程度の意識ではなく、先行して「環境立県」を目指すぐらいの意気込みが重要だ

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