Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

新型コロナのワクチン接種:10月には現在の米国並みにまで進むか

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年6月7日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 米国では、春以降ワクチン接種が急速に進み、人々の行動も大きく変化。先日、全米プロゴルフの最終日18番ホールで、ノーマスクの大勢のギャラリーがミケルソン優勝の瞬間を見ようと、グリーンへ我先にと突進していく光景には驚いた。NY勤務から帰国した知人が「米国では新型コロナはほぼ克復したというムード」と述べていたが、それを如実に表した光景と感じた。


 翻って日本については、OECD加盟38か国の中でワクチン接種が最も遅れているが、政府が本腰を入れる中、ここにきて接種のペースが上がっている。1日当りの接種回数は平均50万回を超えてきており(図1)、政府が目標とする1日100万回も夢ではなくなっている。


 政府が6月2日に公表した高齢者接種に関する調査によると、7月末までに接種を完了すると答えた自治体は98.7%と、5月半ばの調査(85.6%)に比べ大幅に上昇。また、65歳未満についても、高齢者接種の完了前からワクチン接種を開始する方針が示された。


 ワクチンを1回以上接種した人数の対人口比率で日米を比較してみると、6月3日時点で米国が50.6%に対し日本が9.2%(図2)。この日本の比率は2月上旬における米国の比率と同じくらいで、日本が約4か月の遅れ。今後日本も米国並みにワクチン接種ペースを上げることができれば、4か月後の10月には接種率が現在の米国と同程度にまで上昇する。一部変異株への有効性など不安材料もないではないが、ワクチン接種が進めば、米国のような新規感染者数の明確な減少を期待してよさそうだ(図3)。


 問題は日本の接種が米国並みに進むかどうか。この点、前出の知人によれば、「NYでも当初は予約システムの不具合や打ち手の不足などにより、接種がなかなか進まなかったが、様々な工夫が重ねられて接種ペースが加速した」。日本でも、ワクチンの量は十分確保されたようなので、知人曰く「ロジスティクスが得意なだけに、本腰を入れれば大丈夫」。


 ワクチン接種は人の命と経済を守る上で極めて重要なもの。今後の更なる加速を期待したい。

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