Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業は前向きなビジネス展開へ──6月日銀短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年7月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(7/1日)、日銀短観6月調査が公表された。


 まず企業マインドをみると(図表1)、全規模・全産業の業況判断DIは、昨年6月の-31をボトムに6月は-3まで改善。相次ぐ緊急事態宣言等にも拘わらず、世界的な貿易回復を反映した製造業に牽引される形で、3月に比べて5ポイント改善し、コロナ発生直後の昨年3月(-4)を上回った。製造業は、大企業(+14)だけでなく中小企業(-7)でも、コロナ直前の19年12月(それぞれ0、-9)を上回った。


 感染拡大の影響を強く受ける非製造業のマインドは慎重さを残す。ただ、3月対比では幾分改善し、大企業はプラスに転化。中小企業の先行きが現状対比3ポイント悪化しているが、慎重にみるクセによるもので、悪化幅は過去1年(-5~-8)に比べ小さい。また、飲食・宿泊や対個人サービスでは、先行き大幅な改善が期待されている。


 次に事業計画をみると(図表2)、売上・収益とも、21年度は非製造業を含め増収・増益に転じる見通しで、3月計画対比でも上方修正。設備投資も、21年度計画はソフトウエア投資中心に増加に転じ、+9.3%と高い伸び。大企業・中小企業、製造業・非製造業とも増加計画にあり、いずれも6月の計画としてはかなり強めとなっている。


 以上のように、6月短観は、世界経済回復と積極的な財政・金融政策により企業活動全体が支えられているうちに、予想以上のワクチン接種の進捗により、大きな打撃を受けてきた対面サービスを含め、先行きの改善期待が拡がりつつあることを示すもの。また、全体として企業が前向きなビジネス展開に軸足を移しつつある姿を滲ませる結果とも言えるだろう。変異株の影響を含め当面の感染再拡大には注意が必要だが、短観が示唆する企業行動が先行き実現していくことを期待したい。

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