Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

新型コロナ:感染拡大の一方、重症化は抑制

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年7月27日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 新型コロナの感染が再拡大している。東京五輪開催の直接的な影響というより、ヒトの動きの活発化と感染力の強いデルタ株の流行によるものだろう。ただし、新規感染者数の増加に比べると、重症者数や新規死者数は今のところ抑制されている(図表1、2)。インドとの結び付きからデルタ株の影響を強く受ける英国でも、感染が急拡大する一方、死者数の増加は緩やか(図表3)

 共通するのはワクチン接種の進捗。海外の研究によれば、ワクチン接種による感染そのものの抑制効果は不確かだが、デルタ株を含め発症や症状悪化の抑制には明確な効果があるとされる。日本では、重症化しやすい高齢者のワクチン接種が相当進捗し、新規感染者に占める60歳以上の割合は、2月頃の3割強から足もと1割弱まで低下。英国でも感染拡大は若者中心の模様で、死者数が抑えられているため、政府は活動制限の緩和に踏み切っている。


 感染しないことに越したことはないが、日本においても、新規感染者数に焦点を当てる議論は修正した方がよいだろう。そう申し上げた上で、2点指摘しておきたい。


 第1に、日本では、集団免疫ができるには今少し時間がかかる。当面はマスクや手洗いといった感染防止対応が必要だ。ワクチン接種は進んではいるが、接種人口の割合は1回以上が4割弱(図表4)、2回が25%程度と、集団免疫ができるとされる「2回接種で7割以上」にはかなりの距離。米英では1回以上接種が5割を明確に超え、2回が5割程度、既に感染した割合も1割程度と、集団免疫に近づいている。


 第2に、日本では、その米英で問題とされるワクチン接種の頭打ちを回避したい。ワクチン接種を忌避する割合が一定程度存在するほか、他人のワクチン接種による感染減少に「タダ乗り」する人々も出ていることから、米英では接種率が6割前後で頭打ち傾向。変異株の影響も加わり集団免疫ができる接種率には不確実性があるため、更なる接種の拡充が望まれる。日本においても、接種を避ける動きを抑制するための工夫が今後必要となる可能性を意識しておくべきだ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。