Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

4~6月GDP:もたつく日本経済

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年8月17日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今週初(8/16日)に公表された21年4~6月の実質GDPは、前期比+0.3%・年率+1.3%と、2期振りのプラス(1~3月は前期比-0.9%)。輸出や設備投資が増加したほか、個人消費も小幅ながらプラスに転じた。


 東京都の緊急事態宣言などにも拘わらず底堅いとも言えるが、本年入り後は多少の振れを均せば横這いにとどまる。海外主要国との比較でも、4~6月の成長率は目立って低く、コロナ前に比べた水準も総じて低い(図表1、2)。日本経済の評価としては、コロナ対応に手間取る中で、もたついているというのが妥当だ

 それ以上に問題は7~9月以降の経済の姿。私自身1か月ほど前には、輸出と財政政策に支えられているうちにワクチン接種の進捗から個人消費も回復に転じ、秋以降は日本でも景気回復が明確になるとみていたが、感染の爆発的拡大とそれに伴う重症者の急増により、雲行きがやや怪しくなってきた


 菅総理は、諸外国の例を参考に、「全人口の約4割が1回接種したあたりから、感染者は減少傾向が明確になる」との趣旨の発言をしていたが、日本では、すでに5割程度が1回以上の接種を終えた現在においても、感染収束の兆しが窺われない。デルタ株の感染力が強いことなどによるものだろう。当面は、人流抑制を含め、感染減少に全力を尽くす必要がある。


 私はそれでも、ワクチン接種の完了が人口の6~7割以上まで進めば、重症化抑制によって医療体制の逼迫を緩和する状況改善に至ると、期待を込めてみている。ただ、ワクチン接種が進んだとしても、感染自体は相応の規模で継続する可能性は高い。それを前提に経済との両立を図る観点からどう対応することが日本にとってベストか、重要な選択を迫られそうだ。


 特効薬の開発・利用促進を含めた効果的な医療体制の構築、国内経済活動におけるワクチン接種証明書やPCR検査証明書の有効利用などについて、米欧での対応状況も参考にしつつ、議論が深まることを期待したい。

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