Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業活動は何とか底堅さを維持──9月日銀短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年10月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(10/1日)、日銀短観9月調査が公表された。新型コロナの思わぬ感染急拡大や自動車部品不足など悪材料が多く、業況悪化を予測する市場予想も少なくなかっただけに、全般に底堅いとの印象だ。


 企業マインド(業況判断DI)をみると(図表1)、全規模・全産業では、昨年6月の-31をボトムに9月の-2まで、5期連続の改善。ただし、改善ペースは鈍化(6月+5→9月+1)。


 製造業は、大企業・中小企業ともに、自動車の悪化からペースは鈍化したものの、全体では引き続き改善。コロナ前の水準に回復した状態が維持されている。一方、感染拡大の影響を強く受ける非製造業では、大企業・中小企業ともほぼ横ばいで、コロナ前の水準にはほど遠い。このうち対個人サービスや宿泊・飲食は、6月時点で先行き大幅改善を期待していたが、実際には悪化ないしは横ばいにとどまった。


 21年度の事業計画をみると(図表2)、非製造業を含め増収・増益に転じる見通しが維持され、6月計画対比でも上方修正。設備投資も、ソフトウエア投資中心に高い伸び。大企業・中小企業、製造業・非製造業とも増加計画が維持され、いずれも9月の計画としてはかなり強め。


 以上のように、9月短観は、夏場の感染再拡大などで企業活動は足踏み気味となったものの、ワクチン接種の進捗などによる経済正常化を前提に、企業が前向きなビジネス展開に取組みつつある姿を示す結果になったとみている。


 当面の企業活動に関連する主な留意点としては、①国内における行動制限緩和の展開、②短観の仕入価格判断の大幅上昇にみられるようなコスト上昇、③米欧における日常生活の正常化によるモノからサービスへの需要シフト、などを挙げておきたい。③はこれまで経済を牽引してきた輸出の伸び悩みにも繋がりかねないほか、②は販売価格転嫁が可能となる環境が必要とされるだけに、①の国内活動回復がより重要なポイントとなる。この点、新政権の適切な舵取りにも期待したい。

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