Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

ワクチン接種完了は今月中にも7割台に

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年10月5日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 ワクチン接種の状況や効果については、日々メディアで報じられご案内のことも多いと思うが、幾つかのポイントを整理しておきたい。

 まず、全人口に対する接種完了の比率は、10月末にも7割を超えそうだということ。10月3日時点で、1回以上が71%、2回完了が61%。通常1回目から2回目まで3~4週間程度あけることとされ、統計では60%超えが30日のラグ(図表1)。因みに、直近時点で接種完了が7割を超えている先進国は、ポルトガル(85%)、スペイン(78%)、シンガポール(77%)など数か国。米国は55%にとどまる。

 次に、希望者全員の接種が終わるとされる11月にどこまで接種率が高まるか。現時点で1回以上の接種率は、65歳以上で9割を超え、50歳代も8割台乗せ、遅れていた20歳代も57%に到達(図表2)。接種対象である12歳以上は人口の9割程度であるため、対象年齢の9割接種で全人口の81%程度、8割接種で72%の接種率となり、最終的にはその間の水準になるとみられる。河野元大臣は10月1日に「全人口の8割くらいはいきそう」と発言しており、世界でもトップクラスの接種率となりそうだ。

 ワクチン接種の効果については、重症化や致死を抑制する上で大きな効果を発揮するが、感染予防の点でも一定の有効性があるとされる。日本の場合、9月中旬(15-17日)の感染者に関する厚労省の調査によると、感染率は未接種に比べ1回接種で4割弱、2回接種で1割弱にまで低下するとの結果(図表3)。最近の感染者数の急減にワクチン接種の進捗が影響している可能性を示唆するものだ。

 ただし、諸外国の例を見る限り、ワクチン接種が進んでも、感染自体が終息するとまでは見込めそうにない。今後は、①行動制限緩和に伴う人流の活発化、②季節的な低温・乾燥という環境、③接種完了からの時間経過に伴うワクチン効果の低減、といった感染拡大の可能性を高める要因が重なる。インフルエンザのように手軽な経口薬が利用可能となるまでの間、少なくとも当面は、基本的な感染予防対策を継続することが大事だ。

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