Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日本のGDP:7~9月で低迷は終わりと期待

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年11月15日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(11/15日)公表された21年7~9月の実質GDPは、前期比-0.8%・年率-3.0%と、2期振りにマイナスに転じた(4~6月は前期比+0.4%)。その背景は、新型コロナの爆発的な感染拡大や幅広い地域での緊急事態宣言の影響から個人消費が減少したほか、前期まで増加を続けていた輸出が世界的な供給制約の影響等からマイナスに転じたことなど。


 7~9月を含め本年入り後は多少の振れを均せば横這いにとどまり海外主要国との比較でも本年入り後の成長率は低い(図表1)。日本経済はコロナ対応に手間取るうちに、この夏には、回復を牽引していた世界貿易が減速したことの影響を受けたといったところだ。

 しかし、秋口から状況は好転。ワクチン接種の急速な普及などから感染や重症化は抑制され、人々の消費行動は活発化。景気ウォッチャー調査をみると、家計動向関連が牽引する形で9、10月と改善し、現状・先行き判断とも「好転」「悪化」の分岐点とされる50を明確に上回った(図表2)。


 当面は、輸出関連で減速感が残るものの、消費関連が明確に改善し、経済成長全体としては明確なプラスに転じるとみてよいだろう。


 来年も、基本的には、①抗体カクテルや経口薬の利用を含めた効果的な医療体制の構築、②国内経済活動におけるワクチン・検査パッケージの有効利用、③新政権の新たな経済対策などの効果から、国内需要が回復傾向を持続し、輸出も世界的な供給制約が緩和するに連れて増勢を取り戻すと期待


 同時に、①新たな変異株が感染症の鎮静化を遅らせることはないか、②エネルギー高を含め供給制約が長引くことはないか、③海外先進国における金融緩和の修正が株式を含めた国際金融市場を混乱させることはないかなど、不確実な要因にも一定の注意が必要だ。

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