Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業誘致セミナー:千葉の魅力と課題 

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年11月24日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 ちばぎん総合研究所と千葉銀行は、11月12日、「企業誘致セミナー2021」を開催。千葉県に本社を移転ないしは事業展開を進めてきた企業3社(イオン、MITホールディングス、大和ハウス工業)を招き、進出の魅力と課題、行政への要望などについて議論した。千葉県に進出を検討する企業だけでなく、企業誘致を手掛ける行政にとっても参考となることを狙いとしたものだ。


 今回のセミナーも、対面(千葉銀行本店)とウェブのハイブリッドで行ったが、参加者は県内自治体・県内外の企業を中心に計100名近くに上った。第1部の基調講演と第2部のパネルで構成、私は第2部のモデレーターとして参加。


 第1部では、企業の方の講演に加え、ちばぎん総研のスタッフによる都内企業を対象とするアンケート調査結果の紹介もあった。そこでは、回答企業のうち千葉県に事業所の移転・開設を予定している企業の割合は5.0%であり、都内に立地する売上高15億円以上の全企業数(25,823社)を乗じると1,291社に上るという試算結果が示された。また、移転・開設理由としては、「本社や取引先などとの近さ」、「人材・労働力の確保のしやすさ」などが多いことも紹介された。


 第1・2部を通して企業から聞かれた声を整理すると、まず千葉県への進出の魅力としては、①都心からの近さ、②纏まった土地の確保のしやすさ、③人材の確保のしやすさ、④成田空港への近さ、などが挙げられた。人材に関しては、「都内では取り合いとなるが、キャリアを辞めた女性を含め、特に本業以外(総務など)での優秀な人材が確保しやすい」とした上で、「北米ではIT関連の拠点は千葉県のようにゆったり暮らせる中規模都市が多い」との指摘があった。また、「農水産品に恵まれていることは、『千産千消』を掲げつつ、食品販売を展開しやすくする」といった声や、「海外への玄関口である成田には、川崎のキングスカイフロントと同じような、日本を代表するバイオメディカルタウンができるポテンシャルがある」との見方もあった。


 一方で、千葉県への進出にとっての課題や行政への要望も多く聞かれた。例えば、「幕張新都心は国際都市とされているが、実は成田空港へのアクセスがあまりよくない」、「千葉市はドローン特区となったが、それで具体的に何をやりたいのかが見えてこない」、「アクアラインの値下げが恒久化されていないことが、企業立地の決断に足枷となっていることがある」などの声が聞かれた。また、「民間と行政の協力体制が首都圏の他県に比べ弱い」、「千葉県のブランド力が高まっていない」といった点も指摘された。


 行政を含む関係者としては、こうした企業の率直な声にも耳を傾け、千葉県への企業進出がさらに活発化するよう、他地域の企業に対する千葉の魅力の情報発信を強化するとともに、課題を少しでも克服するための努力を重ねていく必要がある。


 詳細についてご関心のある方は、当社のマネジメントスクエア(2月号に掲載予定)をご覧いただきたい

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