Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業マインドはコロナ後初のプラスに転化──12月日銀短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年12月14日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨日(12/13日)、日銀短観12月調査が公表された。国内での新型コロナ感染の落ち着きを反映して、非製造業中心の企業活動の改善を示す結果だ。


 企業マインド(業況判断DI)をみると(図表1)、全規模・全産業では、昨年6月の-31をボトムに6期連続で改善し12月は+2と、コロナ直前の19年12月(+4)以来のプラスに転じた。


 早めに改善していた製造業は、世界的な供給制約の影響等から、大企業が横ばい、中小企業が小幅改善にとどまるなど、頭打ち気味。一方、出遅れていた非製造業では、大企業・中小企業とも、対面型サービスを中心に明確に改善


 21年度の事業計画をみると(図表2)、増収・増益に転じる見通しとなり、9月計画対比でも上方修正。設備投資も、ソフトウエア投資中心に高い伸びが維持され、12月の計画としては強め。


 今回の調査は、世界的な供給制約に伴うコスト増の影響が懸念されたが(図表3)、収益動向や景況感にみられるように、今のところ全体としては、経済活動回復によるプラス効果がコスト増加によるマイナス効果を上回っているようだ。


 当面は、売上面ではオミクロン株、コスト面では原材料高の影響が気になる。前者は今回調査には十分に織り込まれていないとみられるだけに、今後の動向は注意が必要。


 後者のコスト高を価格転嫁できるかは、最下流である消費者の値上げ許容度が大きく影響する。日銀の「生活意識に関するアンケート調査」によれば、21年9月調査ではコロナ前の19年9月調査に比べ、購入の際に特に重視することとして、「価格の安さ」(55.4%→47.9%)が大きく低下する一方、「安全性」(44.1%→45.7%)や「環境や社会に配慮」(9.4%→12.5%)などが上昇。こうしたコロナ禍での消費者意識の変化を捉え、品質面等での工夫により適切なコスト転嫁を実現し、長年続いた安値競争に終止符を打ちたいところだ。

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