Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日本のGDP:10~12月は明確に回復したが

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年2月15日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(2/15日)に公表された21年10~12月の実質GDPは、前期比+1.3%・年率+5.4%と2期振りのプラス、かつ高い伸びとなった(図表1)。その主因は、新型コロナ感染の鎮静化と9月末の緊急事態宣言の解除によって、個人消費が明確に回復したこと(前期比+2.7%)。感染が収まれば経済活動がリバウンドすることが証明された。とは言え、幾つかの留意点がある。

 第1に、米欧と比べると、景気回復のペースは極めて緩やか。10~12月の実質GDPを前年比でみると、米欧が+5%前後であるのに比べ日本は+0.7%と極めて低い。米欧では、迅速なワクチン接種や経済優先のスタンスから、昨春頃から景気回復に向かった一方、日本では、政府の対応の鈍さに加え国民の感染に対する慎重なスタンスが、夏場まで景気のもたつきに影響した。

 第2に、経済活動は回復したものの、輸入物価高で所得が海外に流出し、国民の所得(企業収益・家計収入)の伸びは鈍い。10~12月の名目国民総所得(GNI)は、前期比+0.7%・前年比-0.5%と、実質GDPの伸びに比べ明確に低い。

 第3に、年明け後はオミクロン株の感染拡大で、地方圏中心に消費活動も予想以上に抑制されている感。オミクロン株は感染力が高いが重症化率は低いことや、首都圏の飲食店では20~21時頃まで酒類が提供可能となっていることなどから、私自身は消費活動への影響が大きくないとみていた。しかし、小売・娯楽施設へのヒトの動きをみると、千葉県や東京都で鈍さが続いているほか、それ以上に全国ベースでの落ち込みが大きい(図表2)。人々の感染忌避の心理が根強いことや、地方圏にも感染が拡大し、まん延防止等重点措置が幅広く適用されていることなどが背景。

 当面は、新型コロナに加え、資源高やその一因でもあるウクライナ情勢など、不透明な要素が少なくなく、企業経営としてはそれらへの目配りが欠かせない。

 ただし、新型コロナに関しては、新規感染者数がどうやら2月前半でピークを打ちそうであり、3回目のワクチン接種も進み始めたことが、明るい材料。新たな変異株には注意が必要だが、仮に弱毒化が進むのであれば、政府には、米欧に後れることなく隔離期間の短縮や水際も含めた行動制限の緩和など、現実的な対応を迅速に進めてもらいたい。

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