Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

個人消費の動向:強弱入り混じる

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年4月14日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 3月21日のまん延防止等重点措置の解除により回復が期待される個人消費について、関連データを確認しておきたい。

 まず、消費関連施設の移動データについて、千葉県と東京都の動きをみると、解除前の2月前半をボトムに緩やかな回復傾向(図表1)。そもそも重点措置中も、緊急事態宣言が発出されていた昨年初と比較すると、飲食店等の営業制限が緩いこともあり、特に千葉県でのヒトの動きの落ち込みは小さかった。

 こうしたヒトの動きの変化は関連企業の景況感改善にも繋がっている。3月下旬に実施された景気ウォッチャー調査で家計動向関連の景気判断をみると、現状・先行きともに改善に転じている(図表2)。別の詳細なデータで確認すると、飲食、イベント、宿泊いずれも上向き。GWの国内旅行予約も持ち直しているようだ(JTB予測、前年比+68%、19年比-33%)。

 一方、消費者マインドを示す消費者態度指数は3月も低下(図表3)。調査時期が重点措置の解除前であったことも影響していそうだが、諸項目のうち「暮らし向き」の悪化が目立っているところからみて、ウクライナ情勢も反映したエネルギーや食料品の価格上昇懸念を主に反映したものと考えられる。

 今後1年程度の個人消費を展望すると、コロナ禍からの回復力と生活必需品の値上がりといった強弱双方の材料がせめぎ合うが、基本的には緩やかな回復傾向を辿るとみている。

 まず、新型コロナについては、新たな変異株の出現から感染の波を繰り返すが、政府はウイズコロナを前提に各種行動制限を緩める方向にあり、抑制せざるを得なかった消費の回復に繋がっていくと予想される。一方の値上げは暫く続きそうだが、日本では政府の補助金が物価上昇をある程度抑制するほか、コロナ禍で積み上がった家計の金融資産(2年で+133兆円<うち現預金+84兆円>)が値上げへの抵抗力を相応に高めそうだ。

 関連企業にとって、不確実な状態へのリスク管理は必要だが、やや長い目でみた消費の回復傾向を前提に、前向きな取組みが拡がることを期待したい。

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