Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

「脱炭素」の意見交換会

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年5月10日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先月末(4/28日)、環境省の大岡副大臣が全国行脚の一つとして千葉県庁を訪問、「脱炭素」への取組みについての意見交換会が開催された。千葉県側からは、熊谷知事、県内企業(JFE、出光興産、赤星工業)の幹部、市原市長に加え、私も参加。

 企業幹部の方々からは、①脱炭素に向けた先進的な取組みの紹介とともに、②取組みには時間とコストがかかること、③コストアップを社会全体で負担する仕組み(公的支援、価格転嫁など)が必要であること、などの発言があった。市原市長からは、千葉県で唯一の「SDGs未来都市」として、企業・市民・行政が一体となった脱炭素やリサイクルへの取組みが紹介された。

 私は、千葉県全体の視点から、以下のような発言を行った。

 ①千葉県は、京葉臨海コンビナートや成田空港、多くの物流企業の存在などからどうしてもCO₂の排出が多くなりやすく、脱炭素への取組みはチャレンジング。これらは日本の産業を支えるものであり、千葉県の脱炭素が成功しないと日本経済が大きなダメージを受けることを国としても十分理解し、脱炭素がスムーズに進展するような様々な工夫を期待。

 ②千葉県では、成田空港全体の脱炭素目標、外房沖の洋上風力、柏の葉のスマートシティといった、先進的な取組み事例も少なくないが、その際のカギは、関係者間の緊密な連携と脱炭素を契機とした地域発展の意識。

 ③昨年7月実施のちばぎん総研のアンケート調査では、県内中小企業の脱炭素への取組みは全国平均に比べかなりの遅れ。理由として「ノウハウやスキルがない」「設備などに対する費用が確保できない」との回答が多く、国には啓蒙活動や関連投資を促す公的支援を期待。

 熊谷知事からは、①脱炭素に向けてオール千葉で取り組んでいる、②京葉臨海企業などの先進的な取組みにより千葉県が変わることで、日本全体が脱炭素へ向かうエンジンとなる、③国には様々な支援をお願いするとともに、国と自治体、民間企業の連携が重要、などの発言があった。

 最後に、大岡副大臣から、「千葉県における脱炭素への取組みはチャレンジングであると同時に、ポテンシャルも大きい」、「脱炭素を地域活性化に繋げることが重要」などとし、国としても本日の意見を踏まえた上で、環境政策を進めていく旨の話があった。

 今後、国の適切な支援を期待したいが、まずは企業自身が、取引先との関係を含めた脱炭素やSDGsへの取組みの必要性を十分に認識することが重要だ。そのサポートの観点から、本年入り後、千葉県がSDGsパートナー登録制度を導入、千葉銀行もSDGsリーダーズローンの取り扱いを開始。総研としては、県内の脱炭素への取組みについて、昨年以上に詳細に調査した上で、本年秋に脱炭素セミナーを実施する予定だ。県内企業には、これらも活用しながら、脱炭素やSDGsへの取組みを加速することを期待したい。

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