Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

外食産業の動向

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年6月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 3月下旬のまん延防止等重点措置の解除以降、各種の行動制限の緩和に伴い、消費活動が回復傾向にある。政府の月例経済報告会議の資料によると、週次の個人消費額(ネット調査)は、4月にコロナ前の平均レベルを取り戻したあと、5月はそれを5%前後上回る水準まで増加。

 外食も回復に向かっている。日本フードサービス協会によると(表1、2)、4月の外食売上高(全国)の前年比は+13.5%と5か月連続のプラスとなり、本年入り後で最も高い伸び。データを仔細にみると、幾つかの特徴。

 ①前年比では、売上高が明確に回復する一方、店舗数はなお減少し、1店舗当たりの売上高の前年比はさらに高い。

 ②売上高・前年比の内訳をみると、客数(+6.5%)とともに客単価(+6.6%)も上昇。同一メニューの値上げ(消費者物価の外食は4月+1.8%)に加え、メニュー変更を含め高単価商品へのシフトも考えられる。

 ③コロナ前の19年対比でみると、4月の売上高は▲8.1%と昨年夏(8月▲24.4%)に比べ大きく改善するも、なお減少。ただし、店舗数も▲6.4%と減少しており、1店舗当たりの売上はかなり戻ってきている。

 ④業態別の売上高を19年対比でみると、ファーストフードが増加を続ける一方、ファミレスが2割減、パブ・居酒屋が5割減。それぞれ、昨年夏の4割減、9割減からは回復しているが、夜間需要の減少などからパブ・居酒屋中心になお厳しい状況。

 このように、外食産業は回復傾向にあるとは言え、業態による差は大きい(ファミレスでも中華、焼肉は回復)。全業態がコロナ前の姿を取り戻すことは容易でなさそうだ。

 もう一つの課題は、食材などのコスト上昇と人手不足の強まり。労働需給はタイト化に向かっており、4月の新規求人数の前年比は、全産業で+12.3%と伸びを高め(3月+7.5%)、産業別には宿泊・飲食業が+49.6%(同+5.0%)と急増。

 今のところ消費者が値上げを受入れているのが救いだが、外食産業にとっては、高めでも受け入れられやすいメニュー開発、人件費抑制に向けたデジタル化、メリハリをつけた店舗展開など、一層の工夫が求められる。

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