Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

人口流入が再開し始めた成田空港周辺

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年7月15日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 成田空港では、昨年来、航空貨物の取り扱いが顕著に増えてきたが、本年春以降は、旅客に関する水際規制の緩和(図表1)に伴い、出入国者が回復している。

 この4~6月は、季節要因から月によって振れはあるが、成田空港における外国人の入国者数は1か月当り9万人前後まで増加(図表2)。昨年対比でみると、6月は8.3倍となった。また、日本人の海外出張の再開に伴い、日本人の出国者数も6月には8万人超まで増加し、昨年対比で6.3倍となった。

 こうした成田空港における経済活動の回復に伴い、人の流れにも変化が出始めている。成田市やその周辺市町では、有効求人倍率が緩やかな回復傾向を示す中、国内他地域や海外からの人口流入(人口の社会動態)が急速に増加し始めている(図表3)。

 同地域における人口の社会動態をみると、コロナ禍以降は成田空港の活動が低迷するもとで流入が鈍り始め、昨年前半頃には明確に流出超となっていた。逆に現在は、空港関連ビジネスの従業者や外国人などの人口流入に繋がっていると考えられる。

 とは言え、成田空港の外国人入国者数の水準は、6月でもコロナ禍前の19年に比べ9分の1程度。有効求人倍率も回復傾向と言っても、その水準はコロナ禍前を大きく下回る。仮に全国で1日あたり上限の2万人が入国したとしても、外国人の入国者数は一年で730万人程度と、ピーク(2019年)である3119万人の4分の1弱にとどまり、コロナ前では2011年(714万人)に近い低水準だ。

 アジア中心に日本への旅行の意欲は強いとみられ、円安の進行も踏まえれば、インバウンド需要のポテンシャルは極めて大きいはずだ。新型コロナの感染状況に左右されるとは言え、今後は米欧の状況も参考にしつつ水際規制がさらに緩和され、日本の玄関口である成田空港やその周辺地域が活況を取り戻す日を心待ちにしている。

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