Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し──「陰り見え、不透明感増す」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年7月27日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨晩、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。“Gloomy and more uncertain”との表題にあるように、ロシアのウクライナ侵攻の影響が拡がるもとでの成長の減速と不確実性の高まりを指摘している。一方、インフレ率は、資源高の影響などから暫く高い状態が続くとの見通し。

 世界経済の成長率見通しをみると、21年に+6.1%と大きくリバウンドした後、22年+3.2%、23年+2.9%と、前回4月見通しに比べそれぞれ-0.4%、-0.7%下振れ、3期連続の下方修正となった(下表)。

 地域別には、前回の見通しではロシア周辺地域や同地域との結びつきが強い欧州の下振れが大きかったが、今回は利上げが加速している米国や、ゼロコロナ政策に伴う幅広いロックダウンがみられた中国の下振れが大きい。両国とも日本の主要貿易国であるため、わが国経済への影響も大きそうだ。

 22、23年の3%前後の成長率は、長い目でみた世界経済成長率の平均程度であり、メインのシナリオとしては「減速すれども後退せず」とのイメージのようだ。グローバルにみて株価が大幅な調整に至らず、高値圏を何とか維持していることとも整合的である。ただ、今後の想定以上のインフレ高進と金融引締め、中国における新たなロックダウンといった様々なリスクを織り込んだ下振れシナリオとして、+2.6%、+2.0%の成長見通しも示しており、その場合にはかなり停滞感が強い状態となる。

 日本経済をみると、21年度は先行した米国などの景気回復に伴い輸出が牽引する景気の持ち直しであったが、22年度は輸出の減速が見込まれるため国内需要の回復が極めて重要となる。幸い日本の場合、米国などとは異なり金利の上昇は限定的であり、遅れていた行動規制緩和の進展も消費回復に繋がる要素になるとみられ、緩やかながらも持続的な内需回復は期待できそうだ。

 企業としては引き続き、海外情勢やコスト高に注意を払いつつも、コロナ禍からの内需回復やコロナ後の成長を見据えた、前向きな取り組みに軸足を置いておくことが重要だ。

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