Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

人材確保が再び経営の主要課題に

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年8月5日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 千葉県の有効求人倍率は、昨年12月の0.84倍を直近ボトムとして6月に1倍を回復(図表1)。20年5月(1.02倍)以来のことだ。地域別には、千葉、館山、市川(含む浦安)、成田などでの回復が目立つ。また、最近の新規求人の伸びを業種別にみると、卸小売や宿泊飲食サービスなどが大きい。千葉県の労働需給の改善は全国に比べ遅れていたが、行動制限緩和に伴う観光を含めた個人消費や成田空港の活動の戻りなどを反映して、漸く明確になりつつある。

 千葉経済センターの「千葉県企業経営動向調査」(総研の受託調査)で企業経営上の問題点をみると、「売上不振」が減少する一方、「原材料価格高騰」が急増しているほか「人手不足・求人難」も再び増加傾向にある(図表2)。景気が少し戻ると人手不足感が強まることは、少子高齢化などに伴う構造的な働き手不足があることを示唆したものだ。こうしたもとで、企業が取り組むべき経営課題として、コスト上昇への対応にほぼ並び「人材の確保・育成強化」が主要課題に挙げられ、昨年に比べても意識が高まっている(図表3)。

 賃金については、全国の計数ではあるが、前年比が上昇傾向にあり、6月には賞与増加もあって2.2%と18年6月以来の高さとなった(図表4)。今後の景気回復に伴う労働需給引締まりや物価上昇の傾向などを踏まえると、賃金上昇率は、来春にかけて振れを伴いながらも高まっていくと見ておいた方がよい。

 企業の人材確保には、賃上げが重要な要素であることは言うまでもないが、特に若年層については、人への投資を含めた人材育成、彼らの意識が高いSDGsや脱炭素への取組みといったことも大事だ。人材確保に向けた一層の創意・工夫を期待したい。

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