Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉イノベーションベース始動──「千葉から日本を変える」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年8月30日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨年10月に千葉イノベーションベース(CIB)が始動。千葉県にゆかりのある経営者8名が発起人となって、スタートアップ起業家を支援する取組みが始まった。CIBは、「上場」や「上場相当以上」の経営目標にコミットした千葉県の起業家が、お互いに学びあうコミュニティだ。

 狙いは、東京一極集中の現状を解消し、千葉県単体で「情報の質と量」をカバーすることで、千葉県からも有力な起業家を輩出し、県経済の活性化を実現すること。活動を通じてその土壌作りを行っていくとしている。ホームページに掲載されるプロモーションビデオでは、「千葉から日本を変えてやろう、世界を驚かそう」との高い志が示されている。

 具体的な活動は、毎月の定例会で、千葉にゆかりのある上場企業の経営者などを招き、創業・経営の経験や悩みを共有。先輩起業家が若手起業家の相談に乗るメンター制度も設けるようだ。年商1億円以上の企業のみ入会できる若手起業家の世界的ネットワークである「起業家機構(EO)」の仕組みを活用している。

 こうした取組みは、2020年に徳島出身の起業家が、「産業が育たない」「地元の起業家が少ない」などといった徳島の問題に着目し、徳島イノベーションベース(TIB)を立ち上げEOのプログラムを地元起業家に提供したのが始まり。その後、20を超える地域でこの動きが広がっている。首都圏では千葉が最初で茨城が準備を進めていると聞く。

 地方の事情とは異なるが、首都圏の中ではどうしても起業は東京に集中しがちであり、千葉で志を持つ者も東京に流れる傾向が強い。千葉県で、行政主導ではなく民間主導で起業を支援する動きがでてきたことは、県経済の活性化に向けて望ましいものと考える。

 ただ、起業が活発化し、成功していくためには、地域の企業・団体・行政などとの連携も大事だろう。現に徳島のTIBは、地元のメディアや金融機関も共同設立者となっている。また、大学とは、起業家醸成と知的財産活用の両面で、連携しているようだ。

 これまで東京を中心とした首都圏発展の恩恵を受けながら、人口増加と経済成長を実現してきた千葉県でも、20年代半ば頃から人口は減少に転じる可能性が高い。このため、首都圏にある利点を生かしながらも、県の総合計画に示されるように「千葉経済圏の確立」を目指したいところだ。千葉県経済同友会でも、これまで県の弱点とされてきた新規分野の発展を含む産業活性化を念頭において、「千葉イノベーションスクエア構想」を検討している。

 折しも岸田首相が「スタートアップ創出元年」と宣言、国によるスタートアップ育成策も強化される。千葉県においては、CIBによる起業家主導の動きに期待するとともに、国の施策を活用しつつも県としての危機意識を持って、そうした動きが真に実を結ぶよう、関係者一丸となって起業家育成に注力していくことが重要である。

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