Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

景気回復は持続、人手不足が顕著に──日銀9月短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年10月3日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日公表の日銀9月短観で、企業マインド(図表1)をみると、全規模・全産業では6月に続き9月も小幅改善。非製造業が、新型コロナの再流行にも拘わらず、対面型サービス中心に改善を続けたことが寄与。一方、製造業は、海外要因で小幅悪化したものの、底堅さを維持。主要産業である自動車が部品不足の緩和から持ち直したことが主因。

 22年度の事業計画を全規模・全産業ベースでみると(図表2)、売上・収益は前回対比で上振れ増収増益。そのもとで、ソフトウエア・研究開発を含む設備投資は2桁の増加計画と強い。

 こうした景況感や企業行動は、海外経済が減速しコストも上昇する中にあっても、日本経済は回復傾向を持続していることを示すもの。日本では、ウイズコロナが漸く浸透しつつあることや、米欧対比で緩和的な金融環境が維持されていることなどがプラスに作用している。

 雇用判断DIは全規模・全産業で▲28と、コロナ禍前の19年12月(▲31)に迫る水準まで不足超幅が拡大し、先行きも拡大傾向が続く見通し(図表3)。今程度の景気回復で人手不足が顕著となることは、それが構造的な課題であることを示唆。

 この間、販売価格判断DIは、長年値上げが難しかった非製造業においても、大企業・中小企業とも上昇超幅が+23とバブル期に記録した水準まで拡大し、年末にかけて一段と拡大する見通し(前掲図表3)。コスト高の価格転嫁がある程度進められている姿が窺われる。

 海外経済の下振れやコスト高、人手不足など、企業は多様で難しい経営環境に直面しているが、DXやGXも意識しつつ前向きな取組みを進めることが大事だ。価格面では、今回のコスト高が長年の安値競争からの脱却に向けた好機となり、商品・サービス面での工夫と適正な価格転嫁、賃上げによる良好な消費環境の維持といった好循環の定着に繋がることを期待したい。

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