Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し──「生活費危機への対処」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年10月12日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨晩、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。“Countering the Cost-of-Living Crisis”との表題にあるように、生活必需品を中心とした物価高とそれに伴う景気減速への対処が喫緊の課題と指摘。

 世界経済の成長率見通しをみると(表1)、21年に+6.0%と大きくリバウンドした後、22年+3.2%、23年+2.7%と減速。すでに大きく下振れていた前回7月見通しと比べ、22年は不変だが、23年については-0.2%と更に下方修正。

 一方、消費者物価上昇率の見通しは(表2)、21年の+4.7%から22年に+8.8%と大きく高まった後、23年は+6.5%とピークアウトしつつも高めの伸びとなり、いずれも7月対比で大きく上振れ。先進国については、22年の+7.2%から23年には+4.4%まで低下するものの、多くの中銀が目標とする+2%を上回るため、中銀が利下げに転じる姿は見えない。

 こうした見通しの主な背景は、①ロシアのウクライナ侵攻、②インフレ圧力の長期化と金融環境のタイト化、③ゼロコロナ政策に基づく中国経済の減速、と指摘。このため、多くの国・地域で景気下振れ・物価上振れが生じ、特にロシアからのエネルギー供給が絞られるユーロ圏の23年見通しが厳しい。

 世界経済の23年+2.7%成長は長期平均の約3%を幾分下回る程度であるため、IMFも「大きな景気後退が避けられないわけではない」とするが、4分の1の確率で2%を下回るリスクも指摘しており、注意が必要だ。

 IMFによる日本経済の成長率見通しは22年+1.7%、23年+1.6%と、力強さを欠きつつも0%台半ばの潜在成長率を上回る。幸い日本の場合、主要先進国とは異なり物価や金利の上昇は限定的であるほか、遅れていた行動規制の緩和も消費やインバウンドの回復に繋がる要素になるためだ。海外の影響を受ける輸出面でも、主要品目である自動車関連の供給不足が徐々ながらも和らぐ方向にあることがプラスに作用するものと期待される。

 企業としては、海外情勢やコスト高に一層の注意を払いつつも、引き続きコロナ禍からの需要回復や新たな成長を見据えた前向きな取り組みに軸足を置いておくことが重要だ。

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