Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

成田空港の機能強化と地域活性化─経営者協会パネル

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年10月17日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 10月6日、千葉県経営者協会主催の「成田空港の更なる機能強化と地域の活性化」をテーマとするパネルディスカッションが、成田市で開催された。空港周辺地域の行政、事業者(観光、農業、物流)、財界のトップ5名の方がパネリストとして参加され、私は司会進行を務めた。

 目的は、28年度末までに実施が計画されている成田空港の機能強化に関し、地域経済の活性化という観点から、どういう効果が期待され、どういう課題があるか、などについて議論すること。成田空港では、夜間飛行制限の緩和、B滑走路の延伸、C滑走路の新設などにより、航空機発着回数は年間50万回、空港従業者は7万人などと、空港の活動が従来に比べ2倍近くまで拡大することが展望される。周辺地域としては、空港の機能強化を地域発展の梃子としたいところだ。

 パネリストからは、多様で貴重なお話を伺うことができた。共通していたのは、空港の機能強化によって拡がるメリットを、地域の特性と結び付けるとともに積年の課題にも対応しながら、経済活性化に繋げていくことが大事であるとの認識。期待される効果としては、①輸出やツーリズムを通じて、周辺農業が活性化する余地が拡がること、②特区として要望されている農地転用の規制緩和により、物流施設を含む産業立地が拡大すること、などが多く指摘された。

 農業に関しては、アジアの例を参考に、空港周辺に輸出専用の農園を設けてはどうか、農業関連の研究開発施設を空港の中に設けてはどうか、といったユニークな意見も。農業ツーリズムの観点からは、空港からのアクセス(ラストワンマイル)向上が課題との指摘も大事と感じた。

 物流に関しては、都心とのアクセス改善に向けて北千葉道路の早期全面開通などが不可欠との指摘があった。また、成田空港は世界5位の貨物量を誇るだけに、機能強化でさらに増加する貨物量に対応するためには、渋滞が懸念される空港内の貨物地区の拡充・再配置、周辺地域からの人財確保などが重要な課題との貴重な意見も示された。

 私からは自らの考えも含め、総括として3点指摘。第1に、広域エアポートシティとしての魅力向上のために、空港だけでなく周辺地域を含めた脱炭素の取組みが大事であること。第2に、脱炭素や農業のスマート化などの課題に空港エリアが取り組めば、県全体の課題解決にも繋がり得ること。第3に、機能強化の効果を高めるためには、関係者の実効的な連携が大事であること。

 最後の点については、空港周辺地域が受け身ではなく「競争」するぐらいの意識で各地域の魅力を明確にするとともに、多様な立場の関係者と対話しながら共に新しい価値を創っていく「共創」の姿勢を持つという、2つの「きょうそう」の概念が大事だと申し上げた。私自身も、経済団体や自治体などから構成される成田空港活用協議会の参与を務めており、関係者の一人として、地域の活性化に向けできる限り貢献していきたいと思う。

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