Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

企業の人材・組織風土創り─生産性本部シンポジウム

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年10月25日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 10月21日、千葉県生産性本部主催の「企業の持続的成長を支える人材・組織風土創りとは」をテーマとするシンポジウムが開催された。大学関係者、コンサルタント、企業経営者(理美容業)のお三方が、それぞれ「パラレルキャリア」、「社内起業家」、「競争より協力による成長を」の観点から事例を報告、それを受け私が司会を務める形でパネルディスカッションを行った。

 近年、働き方改革やコロナ禍、新たな技術進歩など、労働を取り巻く環境が大きく変化している。そうしたもとで、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の柱の一つが「人への投資」ということもあり、社員が成長と働きがいを感じる職場創りやキャリア形成が、企業経営にとってより重要なテーマとなっていることを受けたものだ。

 それぞれの参加者から多様な視点が示され、新たな発見が多いシンポジウムだと感じられた。以下では特に印象に残った幾つかの点を挙げてみたい。

 ①パラレルキャリアは、副業とは異なり収入を要件としない社外での「学び直し」だが、個人の成長に繋がると同時に会社に対してもスキルの還流を通じてイノベーションに繋がりやすい。業後の時間を作るために業務中は効率的に仕事を行うインセンティブにもなる。

 ②社内で新規事業を行う際には、やってよい項目を並べる「ホワイトリスト」よりもやってはいけない「ブラックリスト」を設けて、あとは自由にやらせる方が成功しやすい。

 ③パラレルキャリアにせよ社会起業にせよ、社内で相談相手がいないことも多いため、外部との「弱い紐帯」が重要。そうした緩やかなつながりが社員の幸福度向上をもたらし、結果的に転職を抑制するという効果もみられている。

 ④社員からみた「働きやすい職場」と企業からみた「生産性向上に繋がる職場」は両立し得る。そのためには、企業のビジョンを明確にした上で、仕事の無駄を省いていく、社員同士で困ったときに助け合えるような雰囲気づくりを行う、ことなどが大事。

 ⑤社員パフォーマンスや企業業績の向上のために、顧客アンケートなどに基づくデータを十分に活用する。社員への研修は、会社主導で幅広く行うのではなく、得られたデータを基に社員に納得させたうえで、弱い点の改善のために自主的かつ集中的に行う。

 望ましい人材育成や組織風土創りは、業種や企業、さらには時代によって異なるため、解は一つではないが、多くの企業にとって貴重なヒントがあると思われた。シンポジウムの詳しい内容は当社のマネジメントスクエアに掲載予定(来年2月号)であり、皆さまに参考にしていただければ幸いである。

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