Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉のヒトの動きはコロナ禍前を回復──インバウンドにも期待

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年11月9日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 新型コロナ感染に関する行動制限が緩和されるもとで、ヒトの動きは活発化してきている。政府公表の地域ごとの高頻度データを示すV-RESASによると、GPSデータに基づくヒトの動き(人流)は、感染が急拡大した夏場に多少もたつきつつも大きく減少することはなく、10月にはコロナ禍前の19年の水準を取り戻した(図表1)。

 千葉県では全国に比べても回復は明確であり、10月のヒトの動きは19年の水準を幾分上回る。データを細かくみると県外からのヒトの動きの増加が目立ち、観光目的の人の往来が増えているものと考えられる。

 県内の宿泊施設の客室稼働率をみると、東京ディズニーリゾートが位置する浦安市に加え、館山市や鴨川市など南総地域の稼働率の水準が高め(図表2)。19年との比較では、インバウンド低迷の影響から浦安市の稼働率が回復しきれていないが、館山市や鴨川市の稼働率は19年の水準を上回りつつある。日本人の海外旅行が円安の影響もあって低迷を脱しきれない中で、自然に恵まれた南総地域は国内旅行客を惹きつけていると解釈できる動きだ。

 今後は、10月11日の水際規制の大幅緩和に伴い、インバウンド客の増加を期待したい。事実、成田地区などのホテルからは、インバウンド客の予約が明確に増えているとの声も聞かれる。インバウンドが最高となった19年の3分の1を占める中国・香港からの来訪はゼロコロナ政策から暫く回復が期待しにくいものの、円安の影響もあってインバウンド全体のポテンシャルは極めて大きいと考えられる。

 千葉県関係者としては、当県がインバウンド客の通り道ではなく多くの地域を訪れてもらえるよう、情報発信や魅力向上に努めていくことが大事である。また、円安や相対的な物価安定により、インバウンド客からみた日本の商品・サービスの安さが目立っているはずだ。このため価格設定についても、インバウンド客をターゲットとした商品・サービスを新設することなどによって、平均単価を上げていくような見直しの余地は大きいと考えられる。

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