Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

建設費上昇の程度と影響

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年12月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 世界的な物価高に円安も加わり、様々な価格上昇がみられるが、顕著な例として建設費上昇が指摘される。先般とある講演で、建設費上昇に関しご質問を受けたこともあり、全国ベースの公表データに基づき整理してみたい。

 国交省が作成する建設費(工事費デフレーター)をみると(図1)、コロナショックでいったん弱含んだあと、21年から上昇傾向を辿り、最近ではコロナ禍前を1割程度上回る水準。内訳としては、住宅建築の上昇が強め。

 建設費上昇には賃金上昇も影響するが、主因はモノによって倍近くとなる資材価格の上昇(図2)。住宅建築費の高さは、ウッドショックと呼ばれる木材高の影響が大きい。

 住宅価格について、ハウスメーカーからは2割程度の引上げとの声を聞くことも。公表統計は、資材価格と労働コストから機械的に作成したもので、資材の入手の遅れやコロナ感染に伴う工期の遅れなどによる諸コストは含まない。このため、実勢価格は公表統計に比べもう少し高めで、コロナ禍前と比べ1~2割程度上昇といったところか。

 建設価格の上昇は、住宅投資にマイナスに働き始めている。GDP統計で住宅投資をみると、名目では堅調な一方、価格変化分を調整した実質では緩やかな減少に転化(図3)。個人消費の方は、モノやサービスの価格上昇が緩やかなため、行動制限緩和に伴い回復傾向にあるが、住宅投資については、価格上昇が大きいだけに多少影響が出始めているようだ。

 民間の非住宅建築に関しては、22年4~10月の建築着工床面積が前年比+5.6%と、今のところ増加を維持。工場(+36.7%)や倉庫(+19.5%)の伸びが高い。企業は高い収益水準のもとで、コロナ後も睨みながら積極的な設備投資スタンスに転じていることが背景にあるようだ。

 ただし、将来のプロジェクトに関しては、建設費上昇で二の足を踏む顧客も出始めているとの声も聞かれる。千葉では、物流拠点やデータセンターをはじめ大型プロジェクトのポテンシャルは大きいが、建設費上昇が建設投資にどう影響していくか注意が必要だ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。