Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

経済同友会「千葉イノベーションスクエア構想」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年12月9日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 千葉県経済同友会は本日、「千葉イノベーションスクエア構想」を公表し、熊谷知事に4つの提言を含む報告書を手交した。

 問題意識は、①先行き人口減に転じるもと東京圏に過度に依存しない千葉経済圏を確立する必要がある、②ポストコロナの経済発展にとってイノベーション促進が益々重要になっている、ことなど。

 昨年夏以降、15回の勉強会を重ねた。医療、脱炭素、農業、ロボット、ドローンなど多岐にわたる内容に関し、第一線でご活躍の方々からお話しをうかがった。

 「千葉イノベーションスクエア構想」は、1983年の「千葉新産業三角構想」(幕張新都心、かずさアカデミアパーク、成田空港の3拠点中心)を修正・発展させたもの。三角構想の成果を振り返った上で、約40年が経過し経済環境も大きく変化した現在、千葉県の強みを活かしつつイノベーション創出に繋げられる新たな産業振興ビジョンが不可欠との考えに至った。

 中心となる拠点は4つのエリアで、「四角」と「広場(拡がり)」の双方の概念を意識し「スクエア」構想と呼ぶこととした(下図)。従来の中核3エリアについて広めの範囲を想定(幕張新都心→千葉大・千葉工大も含めた「幕張新都心周辺エリア」、かずさアカデミアパーク→臨海コンビナートを含む「湾岸エリア」)した上で、イノベーションハブとして発展しつつある柏の葉などの「東葛エリア」も加えた。

 イノベーションの対象となる中心分野としては、①ヘルスケア、②脱炭素・SDGs、③農林水産業を想定。それらを位置付けた背景は以下のとおり。

 ①ヘルスケア:東京圏で高齢化率が最も高いこと、複数地域でスタートアップを含め核ができつつあること、食や観光、スポーツを含め産業の拡がりが期待できること。

 ②脱炭素・SDGs:千葉県のCO₂排出量が日本一である分、湾岸地域中心に脱炭素イノベーションの一大拠点としてのポテンシャルが高いこと。

 ③農林水産業:世界的な価格高騰、円安、食料安全保障などを踏まえると、最大需要地に近い千葉県では発展余地が大きく、スマート化を進めることでドローンやロボットを含めた関連産業の発展にも繋がり易いこと。

 4つの提言は、①県のリーダーシップによる新たな産業振興構想の推進、②産官学民ネットワークの実効性向上と役割明確化、③デジタル実装による地域課題の解決と新たな成長の実現、④交通インフラの整備と産業用地・施設の確保。

 今回調査して分かったことは、三角構想以降も、千葉県はその時々で産業振興に取り組んでおり、様々なネットワーク構築にも尽力されてきている。ただし、その内容は人口に膾炙しておらず、どの程度の成果が上がったかも検証されていない。

 コロナ禍もあって経済環境が大きく変化する今こそ、これまでの施策も検証したうえで、住民や企業などに対し千葉県が明確な産業振興のビジョンを示すことには大きな意義がある。同友会の構想も踏まえた上で、県から明確なビジョンが示され、ひいては千葉県経済の更なる発展に繋がることを期待したい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。