Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

業況判断はコロナ禍前を回復──日銀12月短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年12月14日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(12/14日)、日銀短観12月調査が公表された。

 業況判断(図表1)をみると、全規模・全産業では3期連続で改善、水準は+6と消費税引上げ直前の19年9月調査(+8)以来の高さ。これには、非製造業が対面型サービス中心に明確に改善したことが寄与。宿泊・飲食サービスは大・中小企業ともゼロ以上を回復。一方、製造業は、海外経済減速の影響を受けやすい大企業では小幅悪化したが、内需回復の影響を受けやすい中小企業が改善し、全体でも小幅改善。

 22年度の事業計画を全規模・全産業ベースでみると(図表2)、売上・収益は引き続き上方修正され増収増益。そのもとで、ソフトウエア・研究開発を含む設備投資は2桁の増加計画を維持。

 こうした景況感や企業行動は、海外経済が減速しコストも上昇する中にあっても、日本経済は内需中心に回復傾向を持続していることを反映。日本では、遅ればせながらの行動制限緩和や米欧対比で緩和的な金融環境などがプラスに作用。

 こうした中で、雇用判断が全規模・全産業で-31と、コロナ禍前の19年12月(-31)と同水準まで不足超幅が拡大し、先行きは更なる不足の見通し(図表3)。企業経営にとって、原材料高と並び大きな課題となっている。

 この間、販売価格判断は、長年値上げが難しかった非製造業においても、上昇超幅が大企業・中小企業ともバブル期に記録したピーク前後の水準まで拡大し、中小企業では先行きも拡大する見通し(前掲図表3)。仕入価格の上昇加速は止まりつつあるようだが、反映しきれていないコスト高の価格転嫁を引き続き進める方向だ。

 このように今回の短観も全般に良好な結果ではあったが、先行きの業況判断は通常以上の悪化幅となるなど慎重な見方が示されており(前掲図表1)、不透明な世界経済や人手不足などを背景に企業が警戒感を抱いている姿も窺われる。企業が置かれている環境や課題は様々でベストの対応も異なり得るが、一定の守りの意識とポストコロナを睨んだ攻めの姿勢をバランスよく持ちながら、企業価値の向上に努めていくことが大事だと思われる。

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