Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

今年のビジネス環境はどうなるか

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年1月6日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 明けましておめでとうございます。本年初のテーマは今年のビジネス環境です。

 昨年のビジネス環境は、世界経済減速やコスト高の一方で、日本においても漸く行動制限緩和が進むといった、マイナス・プラス双方の要因が複雑に絡み合うものだった。景気全体ではプラス要因が勝り緩やかな回復傾向を辿ったが、企業による業績のバラツキが目立った。

 さて、今年のビジネス環境はどうなるか。日本経済は上記双方の要因の綱引きとなり、企業による影響も異なるが、全体としては行動制限緩和の効果が上回り、緩やかな回復傾向を何とか維持するとみている。世界経済については、年前半に明確に減速するものの厳しい後退に陥ることは回避され、後半には足取りが次第に確かになるというのが基本的な見立てだ。

 日本を米欧と比較すると、インフレや金利水準が低めにとどまることなどから、相対的に良好な経済状態となりそうだ。IMFやOECDの予測でも、23年の日本経済の成長率は1%台半ばと米欧より高く、潜在成長率(中長期の実力)である0%台半ばを上回る。

 今年の日本経済は、①Reopen(経済再開)、②Reshore(国内回帰)、③Reflation(デフレ脱却)の3つのRがキーワードと考える。

 ①遅ればせながらの経済再開は国内消費に加えインバウンドの回復にも繋がる。外国人の入国者数は、すでに11月時点で成田空港ではピークであった19年の半分弱まで回復。

 ②円安・海外物価高による価格競争力向上や安全保障意識の高まりから、国内生産を多少優先させる方向に舵が切られる。旅行も、海外は回復するが、国内がより選好されそうだ。

 ③世界的な物価高やある程度の円安定着などを前提とすると、マイルドなインフレや賃金上昇が定着し、デフレからの脱却も明確になりそうだ。

 千葉県経済は、成田空港の活動回復、国内旅行の増加、大型プロジェクトの多さなどから、日本全体に比べ多少良好とみている。県誕生150周年もプラスに働くことが期待できる。

 企業として気になるのは、世界経済の下振れリスクなどに加え、金融環境の変化だろう。この点は、前回の点描でも指摘したように、4月就任予定の新日銀総裁のもとで政策修正はあり得るが、本年中はごく小幅の利上げにとどまるとみる。物価・賃金の上昇が定着してもマイルドなもので、米欧のようなインフレ退治のための引き締めが不要なためだ。ただし、僅かな変化であっても、少なくとも一時的には為替や株価などに大きな影響が及びうる点には注意しておきたい。

 千葉県の企業としては、以上のようなマクロ環境を念頭に置いたうえで、様々なリスクに注意を払いつつも、コロナ後の成長戦略をメインに考えておきたいところだ。

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