Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─インフレ鈍化へ、成長はやや上振れ

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年2月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。“Inflation Peaking amid Low Growth”との表題にあるように、インフレはピークアウトの方向と指摘。

 今回の特徴の一つは、23年の成長率が低めながらも若干上振れたことだ。世界経済の成長見通しをみると(表1)、21年+6.2%の高い伸びから、22年+3.4%、23年+2.9%と減速した後、24年は+3.1%と多少リバウンド。23年見通しは10月まで下振れが続いたが、今回は10月対比で+0.2%と僅かながら上方修正。

 上方修正の主因は、ゼロコロナ政策が撤廃された中国の上振れ(前回比+0.8%)。これを含め複数のポジティブ・サプライズがあると指摘。ただ同時に、24年を含めて過去平均の成長率を幾分下回り、リスクもどちらかと言えば下振れ方向とする。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、21年+4.7%から22年に+8.8%と大きく高まった後、23年は+6.6%と高めながらピークアウト、24年に+4.3%まで低下。10月対比では若干上振れたが、それまでの大幅な上振れに比べると僅かだ。うち先進国については、22年+7.3%、23年+4.6%、24年+2.6%と、漸く24年に多くの中銀が目標とする+2%に近づく姿。主要中銀が利下げに転じるのは24年以降だが、23年後半には利上げが止まるイメージだろう。

 世界経済は当面鈍化するものの、「景気後退などは想定していない」というのがIMFの見立て。年後半から、緩慢なペースながら、足取りが次第にしっかりしていくイメージだろう。

 IMFによる日本経済の成長率見通しは23年+1.8%、24年+0.9%と、力強さを欠きつつも0%台半ばの潜在成長率を上回る。23年については、米国(+1.4%)やユーロ圏(+0.7%)より高い。幸い日本の場合、相対的に物価や金利の上昇は限定的であるほか、遅れていた行動規制緩和も消費やインバウンドの回復に繋がるためだ。

 企業にとって、海外経済の不安要素が和らぎつつあるとすれば朗報。油断禁物で下振れリスクに注意が必要だが、基本的には新たな成長を見据えた前向きな取り組みに軸足を置いていきたい。

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