Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県では1ドル120円以下の水準を望む企業が多いが

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年2月8日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 ドル円相場は、昨年10月に1ドル150円を超えたあと、12月の日銀による金融政策微修正の影響もあって、130円前後まで円安が修正されている(図表1)。

 国際機関が算出する購買力平価(物価水準からみて両国の購買力が等しくなる為替相場)は、現在1ドル100円程度。一頃の150円は購買力平価を5割程度上回る円安水準であり(図表2)、逆方向ではあるが大幅に円高が進行した95年の乖離率に匹敵する大きさ。このため150円は過度な円安で、最近の130円前後までの修正は自然な動きとも考えられる。

 ちばぎん総研が県内企業を対象にアンケートを実施したところ(調査期間は22年12月~23年1月)、円安は22年度の企業業績に対しマイナスに影響との回答が6割以上に達した(プラスは5%程度)。千葉県の企業は内需関連が多いことが背景と考えられる。また、望ましい為替水準については、120円未満の回答が7割近くに上る(表3)。現在の130円前後までの円安修正ではまだ不十分との認識のようだ。

 しかし、日米金利差は歴史的にみて大きく、仮に先行き日銀が金融政策を修正するとしてもごく小幅の利上げにとどまるとみられるため、大きめの金利差は残る(前掲図表1)。加えて、日本の貿易収支はある程度の規模の赤字を続ける可能性が高い。

 また、輸出企業のウエイトが高いとみられる全国の大企業へのアンケートでは、県内企業とは異なり120円以上の水準を望ましいとする回答が6割程度に上る(前掲表3)。県内企業の多くが望むような1ドル120円を下回る為替相場になると、全国では色々な雑音がでてきそうだ。

 為替市場は気まぐれで先行きは読みにくいが、様々な状況を踏まえると暫くは、県内企業が望む水準まで円高が進むとは考えにくく、130円を中心とした円安気味の展開を覚悟する必要があるだろう。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。