Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

消費者心理に改善の兆しか

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年3月8日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨年初から、消費者心理が悪化傾向を辿る一方、実際の消費活動は緩やかな改善傾向を辿ってきた(図1、2)。

 この矛盾するようにみえる現象は、消費者が物価高から暮らし向きに不安を感じつつも、コロナ禍で抑制されていた消費、とくにサービス消費が行動制限緩和に伴って回復してきたために生じたものだ。コロナ禍の2~3年の間に、消費の抑制や給付金などの財政支払いによって個人の金融資産が100兆円規模で積み上がったことが、そうした消費を可能にしている面がある(図3)。

 しかし、消費の持続的な回復のためにはマインドの改善が不可欠となる。この点、消費者心理にはここにきて改善の兆しが出始めているようにみえるのは心強い。

 内閣府の消費動向調査の主な構成項目をみると、物価高の影響が強くでると思われる「暮らし向き」が低迷を続ける一方、「雇用環境」や「収入の増え方」は幾分好転している(図4)。いずれも今後半年間の見通しを尋ねたもので、景気回復などに伴う雇用情勢の好転や春闘を含めた賃上げ機運の高まりを反映したものと考えられる。

 消費者心理は当面、物価の上昇と雇用・所得環境の好転との綱引きになるため、基調的な改善に向かうかどうかなお不透明である。心理の改善を支えるという点では、まずは春闘を中心とした賃上げの動向が鍵になると考えられる。

 中小企業を含めた賃上げの見通しについては、別途の機会に議論することとしたい。

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