Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─再び不透明感

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年4月13日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。“A Rocky Recovery”(不安定な回復)との表題で、再度の不透明感の高まりを指摘。

 前回(1月)は中国経済の上振れを背景に久しぶりに成長率を上方修正したが、今回はごく僅かではあるが再び下方修正。世界経済の成長見通しをみると(表1)、22年の+3.4%から23年は+2.8%と減速。24年は+3.0%とごく緩やかに回復する見通しを維持。前回見通し対比では23年、24年とも-0.1%の下振れ。

 回復の不安定さの背景は、米シリコンバレーバンクの破綻に端を発した米欧の金融部門の混乱、それを含めた世界的な利上げの影響、利上げに繋がりうる物価の上振れなどと指摘。金融部門の混乱が拡がれば、成長の大きな下振れも起きうるとする。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、22年+8.7%のあと、23年+7.0%、24年+4.9%とスローダウンの方向だが、1月対比では新興国中心に上振れ、24年でもかなり高い。世界的に物価・賃金の上昇スパイラルがなかなか落ち着かないと指摘している。

 グローバルな金融経済の動向について、IMFの警鐘は理解できるし、一定の警戒は怠れないとしても、過度に懸念する必要まではないだろう。金融部門の混乱は当局の迅速な対応などもあって落ち着く方向にあり、将来の企業収益を反映する株価も多少足踏みしつつも底堅さを維持している。

 日本経済は、これまでのところ個人消費や設備投資中心の緩やかな回復傾向に目立った変化はない。IMFによる成長率見通しも22年+1.1%のあと、23年+1.3%、24年+1.0%と、0%台半ばの潜在成長率を安定的に上回る。インバウンドを含む行動制限緩和や緩和的な金融環境などが経済を支えている姿だ。

 企業経営としては、不透明な海外の金融経済に一定の注意は必要だが、基本的には前向きな取り組みに軸足を置いておきたい。

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