Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県企業の支出行動は積極化

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年5月11日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日公表となった「千葉県企業経営動向調査」(千葉経済センター<総研が受託>)をみると、千葉県企業の支出行動の積極化が窺われる。

 23年度の設備投資計画は、増加割合(46.5%)が減少割合(22.3%)を大きく上回り、その傾向は22年度よりも明確である(図表1)。

 23年度のベア実施予定は、実施割合(51.0%)が22年度(33.3%)を大きく上回り、調査開始(14年度)以来で初めて5割を超えた(図表2)。実施理由は「物価上昇への配慮」(49.5%)が最多だが、「優秀な人材の確保」(43.2%)もそれに次ぐ。定昇を含む賃上げ全体の実施割合も、23年度(83.4%)は22年度(80.1%)を上回る。

 賃上げの実施割合を企業規模別にみると、ベアは中小企業(43.8%)が大企業(61.3%)を下回るが、定昇まで含むと中小企業(85.4%)が大企業(80.6%)を上回り、22年度(77.5%)と比べても大きく上昇。人手不足に悩む中小企業において、人材確保を意識した賃上げ姿勢の強まりが窺われる。

 千葉県経済は、東京圏に位置し内需型企業が多い。このため、行動制限緩和に伴い非製造業中心に景況感がさらに改善していることや、そうした中で構造的な人手不足も明確になっていることが、前向きな支出行動の主な背景と考えられる。

 同時に、岸田政権が「新しい資本主義」で、人への投資やDX・GXを含めたイノベーションの推進を重点分野として掲げていることも、ポストコロナを睨んだ企業行動を後押ししている可能性がある。最近の値上げもそうだが、日本企業の場合、取り巻く環境変化と政策の方向性が明確になると、動きやすくなる傾向が強いようだ。千葉県でも、県がSDGsや脱炭素の方向を明らかにしていることが、多くの企業の関連する取組みに繋がっているのではないか。

 海外経済の不透明感などには注意が必要だが、暫くは前向きな企業行動にも支えられた県経済の回復が続くものと期待している。

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