Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

成田空港の機能強化を巡る動きは新たな局面に

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年5月29日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 5月20日に開港45周年を迎えた成田空港は、50周年となる28年度を目途とした更なる機能強化に向けて着実に歩みを進めている。昨年10月にB滑走路延伸の準備工事を開始したが、その後も重要な出来事が相次いでいる。

 時系列的にみると、まず3月24日には、地域未来投資促進法に基づいて成田空港周辺9市町を「成田新産業特別促進区域」と位置付けることについて、国から同意が得られた。これによって、成田空港の機能との一体的な利用が必要となる物流施設等を整備する場合、例外的に、農地を含む土地を事業用地として選定できることとなった。すでに外資系の物流施設の開発・運営会社が、多古町における農地転用の特例を利用した大規模な拠点開発計画を示している。

 続いて3月30日に、成田国際空港会社(NAA)が「新しい成田空港」構想の中間とりまとめを公表した。昨年10月に学識経験者や国、県、地元市町で構成される「新しい成田空港」構想検討会が設置され、更なる機能強化の推進とあわせる形で成田空港の将来像を検討、中間結果をとりまとめたものだ。多様な観点から目指すべき姿が示されているが、特に関心を呼んだのは、①3ターミナルを段階的に統合し、利便性の高い新旅客ターミナルを中央部分に建設する、②新貨物地区を圏央道に近い北東部分に整備し、土地利用が弾力化される空港隣接地との一体的運用を図る、との方向性。これらは28年度から大きく遅れることなく実現することが望ましいとしている。

 さらに5月22日には、設置から10年を迎えた成田空港活用協議会が、活動期間を従来の1期5年から10年に延ばしたうえで、機能強化実現の前後に当たる第3期(23~32年度)の活動方向を示した。同協議会は県や市町村、NAA、経済団体、民間企業など140を超える会員で構成され、人流・物流両面における成田空港の活用促進やそれを通じた千葉県経済の活性化に向けて、会員が連携・協働しながら取り組むことを目的としたものだ。

 今期の活動方向の特徴は、コンセプトとしてオール千葉に加え、チャレンジ、成長、サステナビリティを新たに明示している点。第2期に臨むにあたって予想できなかったコロナ禍の経験も踏まえ、そこからの需要回復、想定以上のSDGs・脱炭素の動き、期中に実現する機能強化の効果最大化などを強く意識したものだ。

 3つの出来事はいずれも、滑走路拡充など成田空港の更なる機能強化を契機とした千葉県経済の活性化を実現するための新たな動きである。これらが実を結ぶためには、行政、NAA、民間企業がオール千葉でしっかりと取り組んでいくことが大事だ。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。