Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

外食産業─売上回復の中で人手不足への対応が課題

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年6月12日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 外食の回復が明確になっている。日本フードサービス協会によると(表1、2)、4月の外食売上高(全国)は前年比+15.8%。コロナ禍前の19年と比べると、昨年秋からプラスに転じ、4月は+7.0%と最大の伸び。5月以降は、新型コロナが2類から5類に変更されたため、売上の伸びがさらに高まっていると期待される。

 外食データをやや仔細にみると、幾つかの特徴。

 ①売上高回復の一方、店舗数は減少を続け、店舗当たり売上高の伸びは高い(19年比約+15%)。

 ②売上高・前年比の内訳をみると、客数(+6.5%)とともに客単価(+8.8%)も上昇。同一メニューの値上げに加え、高単価メニューへもシフト。

 ③業態別売上高を19年と比べると、ファストフードが2割増、ファミレスは小幅減まで回復。パブ・居酒屋は、深夜の鈍さから3割以上の減少だが、店舗数も3割減少し、店舗当たりでは小幅減まで回復。

 このように、外食産業は、店舗数の減少や業態等のバラツキを伴いつつ、店舗当たりでみればコロナ禍前の姿を概ね取り戻している。

 課題は食材コスト上昇に加え人手不足の強まり。日銀短観で雇用判断をみると(表3)、宿泊・飲食サービスは、コロナ禍には大幅な過剰であったが、最新調査では産業別にみて最大の不足超幅。店舗の減少にも拘わらず、十分な従業員の確保に苦労している。

 人手不足に対し外食企業では、大幅な賃上げに加え省力化への取組みを推進。設備投資を日銀短観でみると(表4)、22年度から積極的な投資姿勢に転じ、特にソフトウエアは大幅増。タブレットでの注文システムなど、様々なDX投資が行われているようだ。

 外食業界平均としては、店舗減少、高単価化、賃上げ、DX投資というのが取組みの方向か。企業戦略は様々だが、その際に業界平均の姿も念頭に置いておく必要があろう。

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