Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

成田空港の外国人入国者はピーク比8割超だが宿泊の回復は鈍い

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年6月19日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 4月29日に新型コロナの水際規制が終了したことに伴い5月の外国人入国者数の動向が注目されていたが、年間ピークを記録した19年との比較において、5月は全国で72%、成田空港ではそれを上回る84%まで着実に回復(表1)。

 全国ベースで国別に上位5か国をみると、5月も韓国が最多という点ではこれまでと変わらないが、ランク外であった中国が4位まで回復したことが特徴(表2)。中国からの増加は、4月5日から他国に合わせる形で陰性証明の提出を不要としたことなどが背景だ。

 5月の中国からの入国者数は19年対比では2割強の回復にとどまり、同国からの割合が高かった関西を含む全国の回復ペースが成田に比べ鈍い要因となっている。ただし、今後は中国からの入国者数が増加するとみられるため、全国と成田の回復ペースの差が縮小しつつ、全体として入国者数がさらに増加していくと考えられる。

 成田空港における外国人入国者数の回復は、空港業務の活発化などを通じて周辺地域の経済にプラスに作用していることは間違いない。ただ、外国人の宿泊者数をみると、3月時点では東京都での宿泊が19年を上回る一方、東京以外の回復は緩やかであり、千葉県の回復ペースはその平均をも下回る(表3)。

 東京は魅力ある街として外国人の人気が高く、近年はラグジュアリーホテルの完成も相次いだため、インバウンドの回復初期として東京に宿泊が集中するのは不思議ではないが、千葉県の状況は残念だ。

 千葉県は成田空港の存在などにより外国人の延べ宿泊者数は19年時点で全国6位(480万人)と元々多いこともあり、増加していけば県経済へのプラス面が大きい。難しい課題ではあるが、今後のインバウンド回復の過程で如何に千葉県にも滞在してもらうか、改めてオール千葉で考えていく必要がありそうだ。

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