Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

円安が再び進行─対ユーロでの円安が目立つ

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年6月27日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 為替円安が再び進行している(図表1)。円の対ドル相場は、昨年秋に1990年以来の1ドル150円超を記録した後、いったん130円前後まで戻っていたが、再び140円半ば近くまで円安が進行。対ユーロ相場は、昨年秋の水準を大きく上回り、2008年以来の1ユーロ155円超まで円安が加速。

 背景の一つは内外の金融政策の違いが注目されていること。米国(FRB)や欧州(ECB)では予想以上に利上げが続く一方、日本では植田日銀総裁の金融緩和姿勢が思いのほか根強いとの見方が市場で広がっている。

 このところ対ドルに比べて対ユーロでの円安進行が速いのは、FRBの利上げペースが鈍る一方、遅れて始まったECBの連続的な利上げが暫く続きそうだとの見方が強まっているためだ。

 円安の日本への影響として気になるのは、輸入コストの再上昇だろう。ドル建ての国際商品市況が昨年春頃をピークに反落したことは幸いだが、高止まりしているとも言える(図表2)。このため、円安傾向が続けば輸入コストがジワジワ上昇していく可能性がある。

 対ユーロでの円安については、輸入全体に占める欧州からのシェアが1割強とさほど大きくないことや日本円での決済ウエイトも高いことから、直ちに輸入コスト全体に大きな影響が及ぶことはないとみられる。

 ただし、欧州からの輸入ウエイトが高い医薬品や自動車、食料品(ワイン、ハム、チーズ等)、バッグ類など、高付加価値品に属する品目については、時間をかけつつも更なる値上げに繋がっていく可能性がある(図表3)。

 今後は、日本でも金融緩和が多少なりとも修正される可能性があり、このまま一本調子で円安が進んでいくとは考えにくいが、円安が大幅に修正されることも期待しにくい。今後の為替相場と輸入コスト、中でも欧州からの輸入品価格の動向には注意しておきたい。

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