Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

景気は内需主導の安定した回復──日銀6月短観

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年7月3日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(7/3日)、日銀短観6月調査が公表された。

 業況判断(表1)をみると、全規模・全産業では+8と、前期にやや足踏みしたあと、再び改善が明確になった。同水準は19年9月調査と同じであり、コロナ禍前の状態にしっかり回復したと言える。

 業種別には、非製造業が改善を続け、製造業も再び改善方向に転じた。非製造業では、水際規制を含む行動制限廃止の影響から宿泊・飲食サービスが中小企業を含め大きく改善。製造業では、海外経済減速の影響を受けつつも、自動車が供給制約の緩和などから大幅に改善したことが、全体の改善に寄与。

 事業計画は、前向きの企業行動を示すもの。全規模・全産業ベースでみると(表2)、売上・収益については、22年度が2年連続で大幅な増収・増益となったあと、23年度も堅調な計画。経常利益は小幅減の見通しだが、22年度大幅増の反動の面が強く、3月比で上振れていることもあり懸念の必要はない。

 ソフトウエア・研究開発を含む設備投資は、22年度に高めの伸びとなったあと、23年度も大幅増の計画。特にソフトウエアが高い伸びで、大きな課題となっている人手不足対応などから、DX投資に積極的であることが見て取れる。

 調査結果は、景気が内需主導で安定した回復経路を辿っていることを示すもの。内需のウエイトが高い非製造業中心に業況が回復するもとで、人手不足も意識され省力化などの設備投資が活発化しており、それ自体が国内需要として今後の景気回復を支えていく可能性が高い。

 主要国での利上げを背景とした海外経済の減速、円安によるコスト高の動向などには注意が必要で、直面する状況も企業にとって様々だろうが、マクロ経済環境面では暫く良好な状態が続くことを企業経営の前提と考えてよいだろう。

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