Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─予想外に底堅いとの評価

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年7月31日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。副題は“Near-term Resilience, Persistent Challenges”(当面は強靭、課題は持続)。米欧における金融混乱の直後で不透明感の高まりを指摘した4月見通しと比べると、予想外に底堅い成長を認めつつも、長引くインフレや金融引締めの影響についてはなお警戒が必要との評価だ。

 世界経済の成長見通しをみると(表1)、22年の+3.5%から23年は+3.0%と小幅の減速となったあと、24年は+3.0%と減速した状態が続くとの見通し。4月見通し対比では23年は+0.2%の上振れ、24年は不変。減速しつつも底割れが回避される一方、明確な回復には時間がかかるとの見方。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、22年+8.7%のあと、23年+6.8%、24年+5.2%と低下するが、4月対比では23年が資源価格を反映して-0.2%下振れる一方、24年は+0.3%の上振れ。世界的なインフレの鎮静化には時間がかかるとの見方。

 4月時点でIMFは、米シリコンバレーバンクの破綻に端を発した米欧における金融混乱の影響を重視し、成長の大きな下振れも起きるリスクを強調。私の見立ては、一定の警戒は怠れないとしても、当局の迅速な対応などから過度に懸念する必要はないというものだったが、幸いその方向に沿って世界経済は底堅く推移している。

 今後、高インフレや利上げの影響などの課題は残るが、基本的には、世界経済はパッとしないが失速することもなく、日本経済にとって概ね中立との見方でよいだろう。だとすれば、日本経済は、個人消費や設備投資などの内需が牽引する形で緩やかな回復傾向を続けるとみてよい。

 国内では、日銀の政策修正の影響に一定の注意は必要だが、7/28日付の点描で示したとおり、暫く金融緩和自体は続き、急速な金利上昇を招かないような舵取りが行われると考えられる。繰り返しにはなるが、企業経営としては、各種のリスクに注意を払いつつも、引き続き前向きな取り組みに軸足を置いておきたい。

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