Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

長引きそうな人手不足・人件費増─千葉県企業の見方

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年8月7日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週公表された「千葉県企業経営動向調査(4~6月)」(ひまわりベンチャー育成基金<総研が受託>)をみると、23年度は増収・増益傾向が明確で、設備投資にも積極的な様子が窺われる。同時に、主要課題は人手不足や人件費増であり、長引くとの見方も多い。

 コスト上昇がどの程度続くかを尋ねると(表1)、原材料費は半年から1年との回答が多い一方、人件費については3年以上続くとの回答が圧倒的に多い。物流の24年問題(時間外規制強化)の影響が懸念される輸送費はその中間だ。

 経営課題については(表2)、「コスト上昇分の販価への転嫁」は多いが前年から減少し2位となった一方、「人材の確保・育成強化」が大きく増加し1位。人手不足対応が意識され「生産性向上」が3位、今回から尋ねた「賃上げ」が5位にランクイン。表2に掲載していないが、「働き方改革・健康経営」(6位)、生産性向上に繋がる「デジタル化」(9位)も、前年に比べかなり増えている。

 こうしたもと、新卒採用の24年予定については、増加(36.3%)が減少(6.6%)を大きく上回るなど、積極姿勢が見て取れる(表3)。1年前に尋ねた23年予定も増加(27.8%)が減少(11.3%)を上回ったが、今回調査の採用予定の方がより積極的である。これは、23年実績が予定通り採用できず減少となった企業の方が多くなったため、それを埋め合わせる意味合いもあろうが、売上げ回復もあって人手不足が強まっていることが基本的背景とみられる。

 ただし、今後の新卒者数は長年の少子化の影響から減少傾向を辿るため、新卒採用を増やすことはさらに困難になっていく。ちなみに千葉県の20~24歳人口をみると、20年は15年対比でいったん増加した(+6%)が、先行きは減少に転じる可能性が高い。こうしたことを踏まえると、賃上げや働きやすい環境作りにより新卒採用を増やしていく努力は不可欠だが、同時に、シニア層や女性をさらに活用すること、労働生産性向上や付加価値の高い商品・サービスの提供で業績向上を図ることなども重要な取組みだ。

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