Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日本の4~6月GDP─物価上昇を伴う緩やかな回復

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年8月15日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(8/15日)公表された23年4~6月の実質GDPは前期比+1.5%・年率+6.0%と3期連続プラス、かつ米欧を上回る高い伸びとなった(表1)。前年比では+2.0%と1~3月(+2.0%)に続きしっかりした伸び。

 ただし、4~6月の高い成長は一時的な面が大きい。これは、高い成長には外需(輸出-輸入)の一時的とみられる大幅増が寄与しており、個人消費などの内需については、前期の高い伸びの反動から小幅減少するなど、均してみると回復ペースは緩やかなためだ(表2)。

 外需の大幅増には、輸出の増加と輸入(控除される項目)の減少の双方が寄与しており、割り引いてみておく必要がある。輸出は海外経済が減速しているもとで高い伸びを続けるか不透明であり、輸入の大幅減も一時的とみておくべきだろう。ただし、輸出の増加には、供給制約が緩和した自動車輸出の増加やインバウンド(サービス輸出)の増加が影響しているとみられ、基調的な面もある。

 今回の特徴の一つは、物価動向を含む名目GDPが前期比+2.9%・年率+12.0%と1~3月(前期比+2.3%)に続いて高い伸びとなったこと(前掲表2)。これは、物価の緩やかな上昇基調が続くもとで、企業の売上げや収益がしっかり伸びていることを意味する。

 4~6月のGDP成長は出来過ぎの面があるが、日本経済が行動制限・水際規制撤廃や緩和的な金融環境などに支えられて、物価上昇を伴いながら緩やかな回復を続けている姿を示すものでもある。当面の景気展開も、海外経済に起因する下振れリスクなどには注意が必要だが、基本的には設備投資や個人消費などに支えられて回復傾向を持続するという見方でよいだろう。

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