Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県の企業倒産─増加してはいるが低水準

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2023年8月21日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本年に入って企業倒産が増えている。東京商工リサーチによれば、1~7月の倒産件数(月平均)は、全国が686件で前年同期比+35%、千葉県が23件で同+37%と大きく増加した。千葉県の倒産件数を業種別にみると(図表1)、飲食などを含む「サービス業他」や「建設業」が前年対比で増え、コロナ禍前の19年も上回る。

 倒産増加は、コロナ禍に行われた「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保融資)の返済開始が影響しているとされる。ただ、より根本的な原因は、コロナ禍を契機とした需要構造の変化、脱炭素の加速、円安等に伴うコスト高、人手不足といった、大きな環境変化に対応できない企業がジワジワ増加していることだ。

 景気は行動制限撤廃などから緩やかに回復しているが、大きな環境変化が生じるもとでは企業業績のバラツキが拡大しやすい。コロナ禍にはゼロゼロ融資や給付金などで殆どの企業が救済されたが、現在は局面が変わり真の経営力が問われる。変化に適した商品・サービスの提供力、脱炭素を含めたコスト削減力、値上げ力や賃上げ力、人材育成・採用力、組織運営力などが重要だ。

 ただし、企業倒産は増加しているとはいっても、全国・千葉県ともに歴史的には低水準(図表2)。これは多くの企業が、バブル崩壊やリーマンショックを経験し、健全経営に努めてきたためだ。過去20年間、債務圧縮や内部留保拡大によって、自己資本比率は中小企業を含め大きく上昇している(図表3)。

 今後も企業業績のバラツキは大きく日本でも金利上昇が見込まれる中で、企業倒産が増加する可能性に一応の注意は必要だが、信用不安などの懸念は不要だ。企業経営としては、大きな環境変化をむしろプラスに捉え、DX・GXを含めた設備投資や社員のリスキリング促進など前向きな取組みによって、「勝ち組」となることを目指したい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。